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当惑、拒絶、畏怖、放心
目玉が飛び出そうなほど見開いて、綴られた文字に目が釘付けになるが、内容が全く頭に入ってこない。
まだ文章は半分以上も続いていたが、これ以上は見るのも知るのも恐ろしくて、急いで日記を引き出しにしまった、その瞬間──、
「あれ? 何してんの……?」
「──っ!!!」
「ん? 朝日だけ? 兼嗣は?」
「っおま……、ッまじ、驚かせんな……っ」
「えっ、なに?」
本当に、足がすくむほどびっくりして、両手で顔を覆う。
危ない。ちょっと泣きそうになった。
ドアの前にいたのは、兼嗣の同室の男だ。
まだ心臓がドキドキしてて、背中に冷や汗がつたう。
ベッドから兼嗣が落ちそうになったときより緊張した。
勝手に人の日記なんて読むから、バチが当たったんだ。
「……か、兼嗣は風呂。俺も、もう戻るわ……」
「え、あ、あぁ……。大丈夫か? なんかあんた、顔真っ青だけど」
「……ん、大丈夫」
「……」
兼嗣と同室の男が入ってくるタイミングで、その横を通って俺は部屋から抜け出した。
心ここにあらずで廊下をふらふらと歩きながら、ぐるぐると落ち着かない思考を巡らせる。
あいつの、知ってはいけない一面を知った気がした。
アニメや漫画でも、ちゃんと女のエロ本持ってたじゃん。
それならまだ理解できたのに。
なんなの、あいつ。
あんな変態みたいなこと書いて、俺のこと、そういう意味で好きだったのか。
俺が兼嗣に畏れのようなものを抱いたのは、漫画に感化されたわけじゃなく、本当に兼嗣の考えていたことを身体が本能的に感じとったってこと……?
思い出して、恐くなった。
俺はずっと、幼なじみだと思ってたよ。
兼嗣はずっと、違ったのかな。
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