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はじまりの終わり。

 一体、いつから……?  あいつ、男が好きだったんか……?  俺はなんの警戒心もなく、いつも兼嗣によりかかって安心して、素の自分をさらけだしていた。  だってあいつは、他人と距離をとるのがうまくて、全然そういうの気にしない質だと思ってたから。  本当はそんな俺の弱いところを見ながら、腹の内で俺を女みたいに犯すことを考えたり、我慢したり、してたの……かな。  なんだか裏切られたような気持ちになって、少し悲しくなって、さみしくなった。  自分の一部が抜け落ちたような、俺自身では埋められない、心の部品を失くしてしまったみたい、な。  もう兼嗣を、兼嗣として見られない。  得体の知らないものになった。  俺の知っているあいつではなくなってしまった。 「くそ……、最悪だ」  いつの間にか自室についていた。  もうひとりの住人は、今はいないようだった。  室内に入り、ドアの前でずるずると尻もちをつく。  一体どう帰ってきたのか全く覚えてないが、あいつと同室じゃなくて心底よかったと思う。  尻もちをついたまま、膝を曲げて、両手でくしゃりと頭を抱える。  その姿勢になって初めて、短パンの前が微妙に窮屈だと気づき、そして絶望した。 「……ぇ、なん、で……?」  か細い声が漏れる。 ……うそ、だろ。  なんであいつを思い出して、ちょっと勃ってんだよ……俺。  もうやだ、自分さえわからない。  信じていた自分の身体にまで裏切られた気がして、サイテーな気分に胃がキリキリする。  あいつに食われるその日を、小動物みたいにビクビクしながら待つしかないのか。  自分はそれを、望んでいる……? ……いや、それは絶対ない。  その夜、俺は少しだけ泣いた。 next.

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