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油断ではなく確認
兼嗣の部屋に戻ったときには、さっきのバラエティー番組は終了していて、ストーリーの知らない恋愛ドラマになっていた。
もともとそこまで熱心に観ていたわけでもない。
ドラマはたしか今期で一番視聴率がいいとか何とかネットニュースで読んだ覚えがある。
しかし一度もまともに観たことがないせいか、鬼気迫る迫真の演技をする俳優たちと今の自分とは、温度差がありすぎた。
兼嗣もとくに見入っている様子はなく、ただBGMにしているだけという感じだ。
興味のない映像より動画でも観ようと、自分のジャージからイヤホンとスマホを取り出す。
「みーちゃん、もういいの?」
「おう、一瞬で見つかったわ」
言いながら、そのまま兼嗣の背後を通りすぎ、ベッドの梯子をのぼる。
「用事って、ほんとにそれだけ?」
「は? 他になんかあるかよ」
「……」
そういえば、こいつのベッド、なんか久しぶりだな……。
ロフトベッドは、二人部屋という限られたスペースを有効利用するため寮内の全部屋に備え付けられている。
だからシーツの色や材質くらいしか違いはなく、そこから見える景色は自分の部屋とあまり変わりはない。
なのに何故だか懐かく感じた。
なんとなく安息の地に拒絶されたような、寂しいような気持ちになる。
だが、いざ寝転んでみると相変わらず肌に馴染む居心地のよさで、そのことにすごく安堵した。
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