21 / 123

油断ではなく確認

 兼嗣の部屋に戻ったときには、さっきのバラエティー番組は終了していて、ストーリーの知らない恋愛ドラマになっていた。  もともとそこまで熱心に観ていたわけでもない。  ドラマはたしか今期で一番視聴率がいいとか何とかネットニュースで読んだ覚えがある。  しかし一度もまともに観たことがないせいか、鬼気迫る迫真の演技をする俳優たちと今の自分とは、温度差がありすぎた。  兼嗣もとくに見入っている様子はなく、ただBGMにしているだけという感じだ。  興味のない映像より動画でも観ようと、自分のジャージからイヤホンとスマホを取り出す。 「みーちゃん、もういいの?」 「おう、一瞬で見つかったわ」  言いながら、そのまま兼嗣の背後を通りすぎ、ベッドの梯子をのぼる。 「用事って、ほんとにそれだけ?」 「は? 他になんかあるかよ」 「……」  そういえば、こいつのベッド、なんか久しぶりだな……。  ロフトベッドは、二人部屋という限られたスペースを有効利用するため寮内の全部屋に備え付けられている。  だからシーツの色や材質くらいしか違いはなく、そこから見える景色は自分の部屋とあまり変わりはない。  なのに何故だか懐かく感じた。  なんとなく安息の地に拒絶されたような、寂しいような気持ちになる。  だが、いざ寝転んでみると相変わらず肌に馴染む居心地のよさで、そのことにすごく安堵した。

ともだちにシェアしよう!