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なんで知ってるの
満更でもなさそうな兼嗣と、雲行きの怪しい話の方向に耐えられなくなって、勢いよく布団から起き上がる。
出口を塞ぐように、梯子の近くに居座る兼嗣を手加減して足で小突いた。
退け、俺はもう自分の部屋に帰る、という意味で。
なのに、
「うぉあ……っ?!」
足首あたりを掴まれ、バランスが崩れた。
下半身が浮いたせいで達磨のようにひっくり返る。
視界には真っ白な天井。それから、ベッドに上がってきて、まっすぐにこちらを見下ろす兼嗣。
背中には柔らかなマットレスの感触。
一ヶ月前の既視感と危機感が、じわじわと、だけど鮮明に、現実味を帯びる。
「あ、でも、みーちゃんはそんなこと気にしないんだもんね」
「は……?」
俺はこんなにも焦って、いやな予感に支配されて、早くここから逃げたいのに。
兼嗣はむしろ柔らかな笑みさえ浮かべていて。
なんで、この状況で笑えんの?
やつの真意が分からない。それが余計に不安を煽る。
「人の領域荒らしたり、勝手に触ったり」
「……か、兼嗣?」
ぎり、と足首を掴む手に力が入る。
天井が近いせいで、兼嗣との距離も近い。
開いた両足の間に座りこまれて、逃げ道が、ない。
それに気づいた瞬間、頭の中で警鐘が鳴り響いた。
「……みーちゃん、見たんだよね、アレ」
「……」
「日記。俺の」
「──み、見て……ない」
とっさに嘘をついた。
確信をもっての断定の口調に、恐ろしくなって、しらばっくれる。
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