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壊れないって、言ってくれ
あっそう、と兼嗣は品定めでもするみたいに目を細めた。
じろじろ見られているのが見なくても分かる。
捕まえた獲物をどう料理するか企んでいるような、肉食獣を連想させる静かに光る眼差しに、蛇に睨まれた蛙の気分を味わわされる。
そしてそんな状況におかれ、あからさまに視線が泳ぐ自分自身に、不甲斐なくて腹が立った。
「……嘘。ほんとは見た」
ここで中途半端に誤魔化したところで、圧倒的な体格差に加えて、すっかりマウントとられてるこの体勢も不利だ。
しかもロフトベッドは転落防止に柵があって、そこからさらに、不安定な姿勢で梯子もなしにおりるには躊躇うくらいの高さもある。
「悪い、俺……言おうとは、思ってたけど、」
「みーちゃんさ、試したんだよね、俺のこと」
「あ?」
「だってそうじゃなきゃ、俺のベッドで無防備に寝ないでしょ?」
「……は?」
試したんじゃない。そうじゃない。
そんなことまで考えてなかった。
でもそれは、本当に?
自分のことなのに、自分でも分からない。
だって、何年一緒にいた?
今まで、どれだけ膨大な量の純粋な思い出があると思ってる。
俺たちは、そんな簡単に壊れる仲じゃないだろう、って。
しいて言えば……、確認したかった。
安心したかったんだ。
あの日記があって、兼嗣が俺をどう思っていようが、昔も今も結局は変わらないって、そう思いたかった。
でも、それって、試したのと同じことなのか。
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