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気持ちよくない、のに
そのまま、裏筋を尖らせた舌でたどって、充血して真っ赤になった雁首を、唇で扱かれたら。
「っあ、ぁ……ッン、ぁアッ……!」
枕に後頭部を擦りつけながら、喉をさらす。
後ろの不快感を無視できない。それは事実だ。
奥まで入ってしまった二本の指が狭い肉壁をこじ開け、直腸を押し拡げてバラバラに動く。
侵入を許してしまった括約筋はもう機能しなくて、状況反射で無意味にひくつくだけ。
痛みの混ざった快楽なんて、全然、良くない。
気持ちよくなんて、ない。
なのに身体は勘違いして、苦痛を伴うそれを、快感だと認識する。
過去最高に、最低な気分だった。
「やめ、やだ……ッ、いやだ、こんなの……っ、うぁあ……ッ!」
指の抽挿はそのままに、自身の先端に舌先が差し込まれる。
唇で、ちゅうぅ、とピンポイントに吸われて、竿のもっと奥に溜まった先走りまで吸い出される感覚に、腰から太ももまでガクガク痙攣した。
「ッひ、ァあ──……!」
身体の中で、快楽の奔流が出口を失って暴れまわる。
自身への刺激だけなら、もうこれでイってた。
でも、尻にいたっては本当に引きつって不快で、それが、いっそ前への快感に集中したくても邪魔をしてくる。
体内はどんどん熱くなるのに、欲を吐き出せるほどの決定打もなくて、なのに、身体は火照る。ずっと。
ずっと、熱がこもって、腰がだるくて、奥もじんじんして、つらい。
「う、ぁ……あぁ、兼嗣、かねつ、ぐ……っ、はなし、て、も、もう……っ、」
イきたい、そう、ついに口走りそうになったとき、なんの前触れもなく突然後ろから指が抜き去られ、代わりに何か無機質なものが触れる。
それはなんの抵抗もなく、指のせいで緩んだナカにぬるりと入ってくる。
小指よりもずっと細くて短いそれに、心当たりがあった。
シーツの上に転がっていた、個包装のローションだ。
「っあ、ぁあ……ッ、待て、いやだ、それ、そんなの、入れんな……っやめ──……!」
とっさに顔をあげて抗議するが、逃げる腰をしっかり抑え、暴れる前に注入されて。
「……いや、ぁ……っ、」
ぼんやりしていた思考に水を差す冷たい感触が、腹のナカをじわりと満たし、とろりとしたのが隅々まで行き渡っていく。
全部は入りきらずに、きゅんきゅん開閉した括約筋の赤いふちから、たらりと透明な液体が漏れる。
「……冷たい? 気持ちわるいの?」
「んっ、ん……っ、」
上下に首を振って、素直にこくこく頷いた。
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