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本番はここから
つう、と汗がこめかみから顔に流れてきて、鼻筋を横切る。
ああ、もしかしたら汗じゃなくて自分の精液かもしれない。それは嫌だな……。
そう思ったら、あんなに熱かった身体が、少しずつ冷えていく。
「……かわいかった、すごく」
「……ぜ、全然うれしくねーわ、それ……」
喉がイガイガする。
声を潰すように叫んでしまったせいだ。
まだ興奮した様子の兼嗣は、ベッドに突っ伏し汗で濡れた俺の前髪を優しく掻きあげる。
「こんなえっちな顔、俺しか見たことないよね……?」
「っんなこと、すんの、お前くらぃ……」
「……それはよかった」
何が良かった、だ。ほんと腹が立つ。
無理やりイかせてといて、白々しい。あとピロートークやめろ。
顔面に唾でも吐き捨てて言ってやりたかったが、節々がみしみしと軋み、それどころじゃなかった。
「……ね、なめていい?」
「……?」
……何を?
そう口にする前に、兼嗣が顔を寄せてきて、舌がべろりと頬を舐める。
ぞわわっと鳥肌が立ち、とっさに腕で牽制するが、あっさり腕を捕らわれて、顔中に何度もキスされる。
ちゅる、と水音がして、今兼嗣が舐めているのは自分の精液だと気づいた。
よくそんなもん口に入れられるな。
絶対美味しいものではないだろうに、本当にこいつの性癖は理解できない。
「……ティッシュで拭けよ……っ、」
「みーちゃんの味が、気になって……」
「……もう絶対すんな」
暴れるのも億劫で、諦めたように呟いた。
正直キモすぎて言葉もない俺に、兼嗣はまだ夢見心地といった様子で、まったりと緩慢な動作でちゅっちゅっと頬や首筋に口付けてくる。
くすぐったくて身をよじるが、やつの言動は徐々にエスカレートして、耳たぶを口に含まれた途端、生理的にびくんっと首を竦めた。
「んぁ……っ、やめ、ろ」
「みーちゃん、どうしよう……っおれ、」
「……な、に……っ、つーか、まじ、やめ、」
軟骨に歯を立てられ、ぬろりと舐ぶる。
イったあとの過敏な刺激に、重だるい身体がぴくぴくと鈍く反応する。
複雑なかたちに沿うように舌先がたどっていき、耳穴に舌が差し込まれ、上擦った吐息がナカに吹き込まれた。
「……勃起しすぎて、痛いの……」
「…………は、」
……待て。おい、待て。待て待て。は?
今なんつった、こいつ。
ゼロ距離で言われたのに、脳みそが理解を拒む。
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