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限界突破
「大丈夫かよ……」
「うぇ゙……っ、まだ出そう……ッ」
「……なんも出てねえけど。つかお前めちゃくちゃ背中熱くねえか。ちょっと熱測ってみ」
そう言って廣瀬は自分のスペースの引き出しから体温計を、俺の引き出しから適当な服をとって戻ってくる。
せっかく床を綺麗にしてくれたのに、速攻で汚してごめんなさいと謝りたいのに、吐き気が止まらなくて言えない。
「……っうぅ゙、」
だんだん目の前が霞んで、白いモヤがかかったように視界が狭くなる。
違和感に瞬きを繰り返すが、明るい部屋の光が乱反射しているみたいで、眩しい。
こめかみがドクドクと脈を打って、激しく疼く。
「──……なんか、おれ、前みえな……」
「は? 美夜飛、おいっ、美夜飛……っ!」
覗きこんできた廣瀬が何か喋っている気がした。
口が動いてるのは分かるのに、声が聞こえない。
焦った表情で肩を揺さぶられるが、触れられている実感がなくて、他人事みたいにそれを眺める。
サイレントモードの映像を観ている気分だった。
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