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大変だったね
花岡は兼嗣のそばで立ち尽くしたまま、廣瀬が去っていった方向を見つめている。
この濁りきった重苦しい空気を、どうしたものかと辟易しているようだった。
「……っ本当に、ごめん」
苦しそうな声で兼嗣はそれだけ呟くと、逃げるように踵を返し、来たときと同じく足早に部屋をあとにした。
ふたりの背中を黙って見ているしかなかった俺は、もうすでに消化不良みたいに胃がモヤモヤし、座っているのもつらいほどの頭痛もぶり返していた。
これは本当に今日一日で治まるようなものかと些か不安になる。
しばらくの沈黙のあと、残された花岡がバツが悪そうに俺のそばへ腰をおろして、へらりと苦笑した。
「……なんか、大変だったね」
「ほんとにな……」
「体調、だいじょぶ? 顔色わるいよ」
「……ああ、大丈夫」
強がってはみたものの、また喉のすぐそこまで吐き気がこみ上げている。
今吐いたら確実に未消化のうどんが丸々出てくる。
かといってこのまま座っているのも、ケツは痛いし頭もガンガンしてキツい。
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