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お友達が増えました
……図星、だったんだ。
自分でもまだ気づいていない心を、気持ちを代弁されたようで、感極まってしまっただけだ。
熱のせいもあって、今は正気じゃない自覚もある。
「……なあ、朝日。俺もこの際だから言うけど、あんたのこと、ずっと苦手だったんだ」
「うぇ……?」
「でも朝日、思ってた感じと全然違うのな。器でかいよ。俺がもし同じことされたら、そうは思えないかもしんない」
「……だな。俺だって許せねえけど、でも……」
「……でも?」
言おうか言わまいか一瞬迷うが、促されて、それは自然と口をついて出る。
「……あいつの全部を、否定したいわけじゃないんだ」
きょとん、と今度は花岡が黙った。
そして一呼吸おいたあと、笑いまじりの温かな声色で。
「もはや愛だな」
なあ、それってさ、親愛なのか友愛なのか、それとも恋愛的な意味なのか。
一体、なんだと思う?
そう思って、口に出そうとして、やめた。
きっと、それを自分で考えないといけないのだろう。
「なあ、俺も、美夜飛って呼んでいい?」
「……そんなん、好きにすればいいだろ」
変なこと聞くやつだな。
「じゃあ、“みーちゃん”は?」
邪気のない明るい声で言われ、はたと少し考える。
唇を尖らせて、そっぽを向いたまま、なんとなく拗ねたように呟いた。
「……それは、ちょっとやだ」
花岡の笑った柔らかい気配がする。
自分のその返答が、それが全てなのかもしれないと、唐突に気づく。
──ずっと、自分に置いてきぼりにされている気分だった。
どうしてそんなふうに思うのか自問しても分からなかった。
抗えなかった自分が情けないのと、兼嗣の一方的な気持ちがやるせないのと、もっと他にどうにかできたのではという後悔と、それでも、あいつの全部を嫌いになれない愚かさに。
救いようがなくて、自嘲もできない。
考えれば考えるほど切なくって苦しくて、胸の奥の柔らかいところがぎゅうとする。
涙が出そうになるのを喉奥でこらえて、深く息を吐く。
今だけは、まだ、何も見たくない。
逃避するように、そっと瞼を閉じた。
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