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【少し前のお話】side花岡
side 花岡
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うっかり充電器を忘れた自分をちょっと呪いたいと思った。
ベッドにいた兼嗣の腰を挟むように、膝を曲げた細くて白い生脚が衝撃的すぎて、もうそこしか目に入らなくて。
そしてその時の兼嗣の低い声と初めて見た鬼のような形相は、別室の友人の部屋に戻っても、しばらく脳裏に焼きついて離れなかった。
………なんなの、ここ男子寮だぞ。
一応女子もいるけど、工業科ということもあって人数は男子全体の一割程度。
ほとんど男子校みたいなところに女子がいるとむしろ気を使ってしまう男のほうが多い。
兼嗣もそういうタイプだと思っていただけに、あの光景は本当に目を疑うもので。
まさに青天の霹靂、内心では阿鼻叫喚だった。
しかも女子寮は別棟で、基本的に昼夜問わず互いの寮を行き来することは禁じられている。
あいつ、大人しそうな顔して意外とやることやってたんだな……と、友人の知らない一面を垣間見た気がした。
──翌朝、売店に朝ごはんを買いに行こうと廊下を歩いていると、たまたま前から来た隣の部屋の同級生と目が合った。
やつは俺を見つけるなりハッとして小走りで近づいてきて、何やら下衆くニヤつきながら、ひそひそと耳打ちしてくる。
「……なあ、お前ら、昨日ナニしてたの?」
「はっ? 俺じゃねえよ、兼嗣だろ」
「えっ、あいつが……? 先越された……」
「……はあ? 何言ってんだ?」
「いや、昨日さ、夜中までずっとえっちな声聞こえてて。ほら、お前らのベッド側の壁、こっちのベッドも近いから」
……え、普通にまずくないか、これ。
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