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気を取り直して
どこか物憂げな、諦めの向こう側に行ってしまったような表情だと思った。
「……ズッキーニ生えてても?」
「ふは、やめろよ、何回も。これからズッキーニ食うとき躊躇うだろうが」
「やっ、やめて! それ俺も思い出しちゃうやつ!」
明るく努めてはいるが、俺はわりと真面目に言ってるんだけどな。
だけど美夜飛がそう決めたんなら、そこに俺が入る余地なんてない。
結局、ふたりの問題だ。
あんなに怒っていた翔だって、その日の夜には少し寂しそうにそう言っていた。
俺たちは当事者じゃないから、見守ることしかしてやれないって。
「……ちゃんと話せるといいな、兼嗣と」
「うん」
「あいつのゲームでもする? いつでも使っていいよって言われてんの」
「……うん」
「んじゃ何する? 対戦格闘系? アクションRPG? 一周まわってエロゲ?」
「なんで一周まわったんだよ」
馬鹿だなあと可笑しそうに笑う美夜飛に、やっと本来の快活な性格を取り戻したように見えて。
気をよくした俺は、意気込んで座椅子から立ち、兼嗣の机に向かう。
あいつのパソコンはなんかすげえからな。
まず本体がデカいし、ギラギラカラフルに光るし、配線もなんかいっぱいある。
パソコンなのにマウスじゃなくてコントローラーを繋ぐこともできるし、画質もやたらと鮮明で。
グラフィックもぬるぬる動いてストレスフリーで楽しい。
なんて考えながら美夜飛の近くを横切ろうとしたとき、タコ足配線から延びる何本ものケーブルに躓いて。
「あぶなっっ!」
「……あ?」
足に絡まる充電器たちと、ルーターやパソコンの配線。
もうどうにもできず片足でトントンよろけて、すぐ足許にいた美夜飛に膝蹴りしそうになったのをとっさに躱した──ら、案の定盛大にすっ転んだ。
「うわぁあ!!?」
「ンぶぁ!!!」
ドスンやらバタンやらゴツンやら、とにかくフローリングの床は、振動を伴う激しい衝撃音を響かせた。
線が絡みつき足がもつれたせいで、不安定な体勢を支えきれず、結局は美夜飛を巻き添えにしてしまった。
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