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締め出しを食らう

 吐き捨てるように言った美夜飛の煽りは無自覚というより、鋭い真摯な眼差しからして、真っ向からぶつかるつもりのようだ。  兼嗣は怒ると力に任せてくるみたいだから、美夜飛に勝ち目があるとは思えなくてヒヤヒヤする。 「裕太……、悪いけど、外に出ててほしい」 「へっ、え……っ?!」 「花岡、こいつの言うこと聞かなくていいぞ。俺が出てくから」  えっ、ええー……!  とてつもなく俺を巻き込んで、間接的な喧嘩をするふたりにオドオド狼狽するしかない。  話にならないと諦めたか苛立った美夜飛がチッと舌打ちし、兼嗣から距離をとって出入り口に向かう。  その後ろ手を兼嗣がすぐに強く掴み、美夜飛を自分の腕の中に閉じこめる。  そして茫然とする俺の背中を優しく誘導するように廊下へ出すと、 「……ごめんね、裕太」  申し訳なさそうに下がった眉と、垂れた目を細めた柔らかい声色で言われて。  パタン、と扉が目の前で静かに閉まる。  そして、ガチャリとドアの鍵をかけられた。

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