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……?

 だが、いざ聞かれた相手はみんな無邪気なガキみたいで、拍子抜け。  その都度、罰ゲームや転んだとか、彼女かもな、なんて嘘か本当か区別がつかないような理由を適当に並べて、のらりくらりと愛想笑いでかわした。  下手に身体を隠したりせず、堂々としていればそのうち好奇の視線はなくなったし、日を追うごとに、目に見える痕跡は少しずつ薄くなって。  今ではもう、跡形もなく消えた。  独占欲を見せるわりには、やり方が浅慮だ。  こっちの苦労も知らないで、やっぱり一言くらい文句を言わないと、腹の虫が収まらない。 「……綺麗に消えるもんなんだな。ほぼ殴打痕みたいだったのに」 「それは俺も思った。風呂場でさ、心配してくるやつもいたよ。えげつなすぎて、怪我だと思ったみたいで」  廣瀬の表情は背中を向けていて見えないが、事情を知っている分、暗い話にしたくなくて冗談めかして笑う。  後ろで大きなため息が聞こえ、ふいに、こつんと後頭部にやつの頭が当たった。 「……今からあんな、顕示欲と所有欲を見せつけるやつのところに行くのかと思うと……。行かせたくないよ、俺は」 「……」  すぐ背後で聞こえる声は、聞き取りやすい落ち着いた低音で。  冷静ではあったけど、どこか苦しそうに、絞りだすようで。  それにどう返せばいいか言葉が見つからず、押し黙る。 「……ずっと考えてたんだ、この一週間。お前は見せねえようにしてたつもりだろうけど、落ち込むお前の姿見たら……。あいつに渡すくらいなら、俺のほうがいいんじゃないかって、気持ちになった」 「……え?」  まさかの発言に驚いて、振りかえった──同時に、腕を引かれ、肩を押されて。  人が丸ごと乗れる大きなクッションに、半ば押し倒された。 「廣瀬……?」  唖然と、見上げる。  すぐ目の前にあるのが、兼嗣ではなく真面目な顔をした廣瀬だってことが、ただただ不思議な感覚だった。

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