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第6夜 第29話
『捺くんが見てる将来を優斗も見てみなよ』
智紀が言った言葉を思い出した。
俺はなにを怖がってたんだろう。
いつかもしかしたら捺くんが俺から離れていくんじゃないか。
いつか俺達のことがばれたとき、心ない中傷を受け捺くんが傷つくんじゃないか。
いつか、いつか―――……。
ただ単純に捺くんのためだけに離れるべきだと思っていたのか正直いまはよくわからなくなっていて、不安なんてものは霧が晴れるようになくなっていた。
『ずっと一緒に』
"きっと"ずっとではなく、真実ずっと一緒なのだと捺くんが見る未来は教えてくれるような気がした。
唇から伝わってくる温もりに心から安堵し―――捺くんの……。
「……」
ん?、とまぶたを上げた。
違和感を覚えた先には俺から顔を離した捺くんと、てっきり触れ合っていると思っていた唇には捺くんの掌が押し当てられている。
「……なに?」
キスするところ、だよね。
戸惑いながら首を傾げると捺くんはそれまでの柔らかい表情を一転させて眉を寄せた。
「あのバカと間接キスなんて俺ヤだ!!!」
「……」
一瞬なんのことかわからなく逡巡して、ああ、と脱力した。
そう言えばクロくんにキスされたな、なんて捺くんには申し訳ないけれど俺にとっては遥昔のことのようにさえ思える出来事。
「消毒して! 歯、磨いて!!!」
「……う、うん」
捺くんに手を引っ張られバスルームに向かって歯磨きをさせられた。
それも、3回も。
そのうえにデンタルリンスもさせられて、正直口の中がひりひりする。
最後軽く口をすすいで口元を拭き終えると捺くんをちらり見た。
俺がちゃんと歯磨きしているかを注意深くチェックしていた捺くんは腕組んで険しい顔をしている。
「……もういいかな?」
これ以上すると歯茎から血が出そうだ。
苦笑いを向けると、ほんの少し口を尖らせた捺くんにまた手を引っ張られ部屋に戻った。
ベッドに座らされ見下ろされる。
「もうあのバカとか、ほかのひとにキスされたりしたらダメだからね?」
「わかった。絶対しないよ」
誓うように言えば、絶対だよ、と釘をさされて―――ようやく唇が触れた。
「……ん」
ベッドにふたり倒れ込んで触れるだけのキスを繰り返し、ふと捺くんが俺を見る。
「あのバカ、舌とか入れてないよね」
「……」
「優斗さん?」
険を含んだ声に誤魔化すように笑いながら身体を抱きしめる。
「……えっと、絡めてはないよ」
「……」
「……」
「あのバカボケ! あー! むかつく!!」
叫んで、またすぐに口を塞がれ舌が入り込んできた。
ぬるっと歯列をなぞり早急に激しく絡みついてくる舌。
意味のないキスじゃなく、捺くんとしているというだけで咥内だけでなく身体も熱くなっていった。
舌が食むように吸われ、舐め交わってくる。
クロくんの痕跡を消すように深いキスを続ける捺くん。
密着した身体からお互いの中心がどんどん熱を持ち主張してくるのがわかる。
「……ん…ぁ」
唇が離れても、俺の首に手を回した捺くんはすぐにまた唇を塞いでくる。
唾液がこぼれても、息が苦しくなっても、それさえも全部快感に繋がってしまっていて頭の中が痺れていく。
キスだけじゃ足りなくて背中に置いていた手を動かし、シャツの中へと潜り込ませる。
滑らかな肌の感触を指先で味わいながら背筋を撫でると微かに腕の中の身体が震えた。
戯れるように背中を撫で続けていたらくすぐったかったのか身じろいだ。
それを気にせず触れていたら唇が離れていった。
「……っん……は……、くすぐったい……」
離れた瞬間に漏れる吐息が甘くてもっとその声を聞きたくなってしまう。
「そう? そろそろ服脱がない?」
笑いながら背中からズボンの中へと手を移動させ引き締まった双丘をゆるく揉むと「優斗さん、脱がせて」と、妖艶な笑みを向けられる。
捺くんを下にしてシャツをずり上げながら脱がせた。
電気をつけたままの室内にほどよく筋肉のついた綺麗な身体がさらされ、思わずキスを落とす。
腹部に舌を這わせ吸いつき、薄い朱を残した。
震える腹筋を舐めては吸いつくのを繰り返しながらベルトを外しズボンに手をかける。
腰を浮かし脱がしやすいようにしてくれるからズボンと下着と引き抜いた。
「もう硬くなってる」
小さく笑って触れれば脈動し一層硬度を増す。
「優斗さんだって、だろ?」
同じように笑って「脱いで」と促され俺もすべて脱いでいった。
照明を真っ暗ではなくお互いの顔や身体がちゃんとわかるくらいの明るさに落とした。
間接照明のオレンジがかった柔らかい色が艶めかしく肌に反射していてすべて余すことなく触れてキスを落としたくなる。
「ゆーとさん、ちゅーしようよ」
甘ったるい声で捺くんが手を伸ばし、再びお互いの身体を、今度は遮るものなく密着させてまたキスに溺れた。
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