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第7話
「んっ………ふ……」
がっちり後頭部を押さえられてされる激しいキス。
あの罰ゲームのときと違って余裕がなさそうな松原のキス。
舌が這いまわって俺の舌を絡め取って吸いついてきて、頭の中が真っ白になっていく。
夢中になって俺も必死に舌を動かす。
「……っ……ぁ」
唾液が飲み込めなくって口の端からこぼれていってるのがわかる。
でもそんなのどうでもよくって、めちゃくちゃ気持いい。
理性なんてブチブチっと切れてって気づいたら床に松原を押し倒して抱きつくようにしてキスしてた。
「……ん……っは……あ、んっ??」
俺の背中にまわされてる松原の片手。
そしてもう片方の手がもぐりこむようにして俺の下半身に触れてきた。
びくっとしてキスをやめて顔を離す。
とたんに松原と目があって、ニヤッと笑われた。
「なんで勃起してんだ?」
そっと触ってくる手に熱い息がでてしまう。
「……気のせいだよ」
「こんなガチガチにしといてか?」
「……松原だって!」
実際、松原とのキスのムービーをオカズに何回もオナニーしてたけど、さすがに本人に言われると恥ずかしすぎる。
俺の腰のあたりにある異物感に、思わず言い返すと松原は冷ややかに笑った。
そしていきなり松原が俺の背中を抱えるようにして反転した。
今度は俺が下で、松原が俺に馬乗りになってる。
「俺のがこうなってる理由は……向井、お前がよくわかってんじゃねーのか?」
やたら凄味のある笑みをしながら俺の息子がズボン越しに握られる。
「ッ……な」
まさか――媚薬いれたの……気づいてる?
松原は俺にキスできるくらいのギリギリまで顔を近づけてきた。
「……さっきから妙に身体が熱くってたまんないんだけど、お前……なんかした?」
囁くような声、だけどなんか怖い。
俺は小さく首を振ることしかできなかった。
「……な、なにも……してない。……酔ってるだけだろ……」
精いっぱい強がって言ったけど、声は情けないくらい弱々しい。
「ふうん。まぁ……そうだよなぁ。男の俺に、媚薬なんて使うわけねーよな?」
「……イッ!」
ギュッと力任せに握られて痛みに顔をしかめた。
――絶対、バレてる!
なんで!?
やっぱ過去遊んでたぶん……使ったことあるとか?
どうしよう……。
ていうか、でも……。
この状況って――。
相変わらず松原と吐く息は荒く熱いし、目だって熱っぽいし。
「……酒のせい……だよ。……お、俺も……酔ってるし」
間違いなくいまさっきキスしたし。
確実に松原の理性が……壊れてるんなら。
「松原のキスがうまいから反応してるだけだよ……」
ドキドキしながら言って、俺は少し身を起こした。
すぐ近くにあった松原の唇に舌で触れる。
松原の首に手をかけると無理やり引き寄せてキスして舌を割り込ませた。
媚薬が効いてるんだったら、今の状況のことなんて考えられないくらいにさせちまえばいい。
煽るように松原の咥内で舌を暴れさせると軽く甘噛みされて、舌が絡まってきた。
「っ……ふ……ん」
息もつく暇がないくらい深く激しいキスの応酬。
気持よくて下半身が疼く。
無意識のうちに張りつめた息子を松原の腰のあたりに押し付けてた。
唾液が糸引いて、離れた唇の間を伝う。
相手は男だって言うのに、どうしようもなく興奮してしまってる。
松原は俺にまたがったまま身体を起こして俺を見下ろす。
キスの余韻でぼんやりしてる俺と同じなのか、松原の眼差しもどこが焦点があってない気がする。
松原は軽く頭を振ると、熱い吐息をついて髪をかきあげた。
「……向井、お前さ」
美形っていうのもあるけど、やっぱ経験豊富だからかなんなのか、松原の色気は無駄にすごい。
なんか喰われちまうような威圧感があるっていうか……。
「男相手に勃起して、そんで処理どうするんだ?」
口元を歪める松原に、思わず息をのむ。
「……え」
どうするって――、え?
ミッキーがその気にさせて媚薬使って……エッチで落としちゃえ、とか言ってて。
「……え? え?」
でも相手は男で、男相手のエッチって。
「………え?」
頭がパニクって考えがまとまらない。
男同士でのセックスがどんなもんか――……知識としては知ってる。
さっき松原を押し倒したいなんて考えた時も、キスした時も……ヤリたいって思った。
だけど―――。
この、俺に馬乗りになってる明らかにドS体質っぽそうなこいつが、俺に……ヤられる………わけないよな?
「……えと、あ……トイレで……?」
ていうことはつまり―――。
「自己……処理?」
キスの余韻なんて吹き飛んで俺は情けない声で呟いた。
それを聞いた松原は愉しそうに目を細める。
……やっぱりこいつドSだ!!
だってすっげぇ虐めるのが楽しそうな目してるもん!!!!
「ふぅん、自己処理……?」
正直、自己処理するくらいなら、萎えるのを待ったほうがいいような気がする。
ていうかさ!
松原だってまだ……勃ってるんだけど……。こいつこそどうするんだろ、自己処理?
……うっ!!
「……向井、お前なに考えてんだ? いま膨張率上がっただろ?」
冷ややかな呆れた目で見下ろされる。
「な、なにも考えてねーよ!!!」
叫ぶけど、顔がありえないくらい熱い。
白い目を向けられて恥ずかしさに顔を背けた。
なんで、こんな展開なんだよ! さっきまでいい流れだったはずなのに!!
つーか媚薬効いてんだろ?!
平気なのかよ、こいつは!!!
本人には言えないから、頭ん中でぶつくさ言ってたら、あり得ない松原の言葉が俺に落とされた。
「自己処理するなら、いまここでしろ」
「……」
「……」
「……は?」
いま、こいつ……なんて言った?
俺の、聞き間違いだよな?
「あの、ごめん、聞こえなかった」
聞き間違いのはずだ!!
「だからいまここでオナニーしろって言ってんだよ」
「………」
フリーズ。
俺のすべては――機能を停止、した。
「……お、おまえ……なに……言ってんの?」
ようやくの思いで出した声は情けないくらい震えてた。
え、だってマジでなに言ってんの。ありえないだろ、おい。
情けなくビビってる俺の顔の横に両手を置き、松原は嘲笑うように見下ろす。
「なに言ってんのはお前だよ。お前に拒否権なんてないだろ? この俺に変なもん飲ませてタダで済むと思ってんのか?」
「……俺は!」
なにもしてない……わけがない……。
鋭く松原に見つめられて言い訳もできなかった。
松原は妖しく笑うと、俺の頬に触れる。
媚薬のせいなのか異様に熱い松原の掌にぞくっとする。
「向井、俺に媚薬盛ってキスして勃起してって、変態だぞ?」
「……っ」
「そんな変態の自己処理を見てやるって言ってんだから、喜んで黙ってシろ」
こいつ……ッ!!
ドSどころじゃねー、鬼畜じゃねーかよ!!!
唖然としてなにも言い返すこともできないでいる俺から身体を退かすと、松原は俺のズボンに手をかけた。
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