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第16話
スマホのデータフォルダを表示させて何度もスクロールさせる。
でもそこに目当てのものはなくって、何度もため息がでてしまう。
あの日――俺が松原のマンションに泊った翌日。
俺は帰りの電車であのムービーを削除した。
"たぶん"、"好き"って気持ちはあるけど、やっぱり松原とどうこうなるなんて無理だろうから。
不純な想いを全部捨て去るために削除したんだ。
だけどあれから1カ月。
捨て去るどころか全然忘れることもできねーうえに……時間が経つ分、俺はどんどんだめになっていってる気がする。
あの夜の、あの快感が――、どうしても忘れられずにいた。
「……っ、ぁっ!」
びくびくと痙攣しながら白濁を吐き出すのは俺の息子くん。
女の子を喜ばせることができる自慢の息子だってのに、今夜もまた俺の手の中で果ててる息子くん。
……虚しい!
ベッドの上で自慰行為に耽ってた俺は枕もとのティッシュを取って息子をきれい拭いた。
ほんとうになにやってんだろ、俺。
こんなに毎日のようにオナニーしてるなんて、中学生のころ……童貞だった時以来じゃねーかな。
しかも女の子とは1カ月ちょっと前に、カナちゃんとシたっきり。
松原とのことがあってから何人かの女の子に誘われたりしたけど、どうしても気が乗らなくって断ってしまってた。
本当に忘れたいならヤりまくったり、合コンでもいきまくったほうがいいのかもしんねーけど……。
「あー!!」
頭ん中がごちゃごちゃして髪をかきむしる。
ぎゅっと目をつぶったら浮かんでくるのはあの夜のことばっかりで。
オナニーしたって……欲求は治まってない。
逆に増すばっかりだ。
――快感が、違うから。
息子扱いてイってって、気持ちいいけど……あのとき松原にイかされたときの刺激は比べ物にならないものだった。
でも、だからって自分で後を弄るなんて、そんなことできるわけもねーし。だってなんか怖いし。そこまでいったら、ちょっとヤバい気するし……。
ブレーキかけてオナって、発散させてるはずなのにどんどん欲求はたまっていってた。
そしてどんどんわからなくなってく。
俺はいまも単純に松原のことが好きなのか、それとも――。
あのときの快感を忘れられないだけなのか。
……そのどっちも今の俺には重すぎて、ただ苦しいだけのものだった。
***
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