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第30話
「え? なにが?」
「あ、あの。ま……松原は……その……指だけで……。えと、その指だけでイかされたから……最後までシてないんです」
「……」
「だ、だからっ。俺……やっぱ……」
「最後までシてないんだ?」
「……へ?」
セックスの途中で怖気づくなんてダセエ!って思うけどしょうがない!
そう思ってんのに、優斗さんの問い返してきた声に、思考が途切れた。
「え?」
「松原さんと最後までシてないの?」
「は……はい」
「そっか」
「……」
え、な、なんで?
「それはちょっと――嬉しいね」
「……え?」
なんで、優斗さん――笑って……?
ぽかんと、優斗さんを見てるとベッドから下りてどこかに行く。
なんだ諦めたのかな?
ほっとしたような、ちょっと残念なような複雑な気持ち。
でもやっぱり初対面の優斗さんと最後までスるっていうのは……って考えてたら優斗さんが戻ってきてベッドに乗って、そしてまた俺の脚を割り開いてきた。
――え。
やっぱりぽかーんとするしかできない俺になんでか楽しそうにしてる優斗さんは手にしていた小さなボトルを開けていて。
――え?
ボトルから優斗さんの指にとろりとした液体が落ちて。
って! え? それってローションなんじゃ――……!?
言葉も出なくってそれを見てるしかできない俺の目の前で、優斗さんはたっぷりとローションを絡めた指をまた……俺の後孔に宛がった。
ヌルリとした感触。
そしてさっきよりも少しだけスムーズに入ってくる優斗さんの指。
浅く出たり入ったりを繰り返しながら奥に進んでくる指の動きに、圧迫感に身体を竦ませてしまってると、ふっと笑う声が落ちた。
優斗さんと視線が合う。
とらわれたように見つめ返す俺に優斗さんの顔が近づいてきて舌で唇を舐められた。
「……ッ……んっ」
明らかに指一本が突き刺さった感覚。
そしてそれがローションの滑りを借りてゆるゆると動きだす感覚。
「心配しなくても俺が最後までちゃんと気持ちよくしてあげるよ」
「……ゆっ」
「捺くん、忘れないでね。いま君は犯されてるんだってこと」
口角を上げた優斗はさっきよりも色気が増して欲情した目をしてて。
俺は――俺は、なにも言えずに……優斗さんの目に呑み込まれるようにして小さく、頷いた。
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