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第64話

「――……なーつ」  だんだんと掠れて熱っぽく甘さがましてく智紀さんの声。  どんどん絶頂へと追いやろうとしてた突き上げがゆるやかなものに変わる。  それに物足りなさを覚えて堪らず智紀さんの腰に足を絡めた。  智紀さんが小さく笑い俺の唇を塞ぐ。  熱く這いまわり舐めまわす舌に、夢中で追いかけ舌を絡めてた。 「優斗さん、なんだって?」  唇が離れていって唾液が糸引きながらぷつんと切れる。 「……え…?」  動きを止めた智紀さんは俺の顔を覗き込みながら、訊いてきた。  すっかり快感に飲まれてた俺は言葉の意味を理解すんのにちょっとかかった。 「……っていうか! なんで、喋ってるときに!」 「だって捺、俺の存在なんて忘れて嬉しそうに優斗さんと喋ってるからジェラシー?」  首を傾げて笑顔を向けられる。 「じぇ、ジェラシーって!」 「あのまま喋られてたら、俺とのセックスなしになりそうだったからね」 「……つーか、智紀さんが勝手に電話取ったんだろ!?」 「はーい、ペナルティね」 「ぺ!?」  なんのことかわかんねーで顔をしかめると、 「"智紀"って呼ぶようにって言ったら? "さん"付けしたからペナルティ1」 って返されてあっけにとられる。 「はぁ?」 「それで? 優斗さんは何の用だった? 何時くらいって聞いてたし…遅くなるとか?」 「……」 「なーつ」 「……ひっ」  耳朶をカリッと噛まれて、身体がびくつく。  答えなきゃずーっとこの調子な気がしてしぶしぶ口を開く。  別に言ったって構わねーだろうし。 「……迎えにくんのが8時くらいになるって」 「ふうん」  言いながらさっき噛んだ耳朶を今度はねっとりと舌で舐めてくる。 「8時か。じゃあ、いーっぱい出来るね?」  智紀さんの目が妖しく揺らめいて、その手が俺のシャツの中に入ってきた。  そして無理やり脱がされそうになった。  抵抗したけど、智紀さんにのしかかられた状態だし、やたら力強いし――。 「ペナルティ、もっとほかのがいい? いまならシャツ脱ぐだけで許してあげてもいいけど?」  囁いてくるその声が、なんか無視できない響きをもってる気がして怯んだ。  その隙にあっという間に脱がされてしまう。  さらされた上半身。  これで俺は――真昼間のオフィスで全裸……なんつーありえない格好になったわけで。 「じゃ、再開しようか」  言うなり止めるひまもなく、また智紀さんは動き始める。  抉るように突きあげながら、手が俺の肌を撫でて胸を弄ったり、背中を擽ったり、絶え間なく動かしてくる。 「ッ、んっ」  何度も激しく揺さぶられて、焦らされてた身体はまたあっという間に耐えきれないくらい熱くなった。  頭のどっかに優斗さんことがあるけど、智紀さんの硬いものがナカを擦るたびに奥を突かれるたびに、頭は空っぽになっていって、快感で埋め尽くされてく。  もうまじで気持ち良すぎて、射精感がすぐそこまでせり上がってきてた。  俺を貫く智紀さんのが出入りするたびに摩擦で熱が生まれて、めちゃくちゃ熱くなってきて。  ぐちゃぐちゃ音がしてて、喘ぐ声が止められない。 「……なーつ」  智紀さんもちょっと息が乱れてて、少し汗ばんでるのがわかる。  上擦った声が俺の名前を呼ぶけど限界が近い俺は智紀さんの激しさに腰を揺らすことしかできない。 「俺のこと、嫌いになった?」  ぐらぐら溶けそうな快感の中で智紀さんが訊いてくる。 「……へ……っあ、ン」  質問の意味を考えようとしたのに、胸の硬くなった突起をぐりっと抓られて背中がのけぞった。 「捺ー? ね、嫌い?」  答えられなくしてるくせに急かすように智紀さんは俺の顔を覗き込んで目を細める。 「……ッ……っ…、きらいじゃ……な……ぁっ」  なんでこんなことなってんのかわかんねーけど、でも、嫌いなわけない。 「――じゃあ、その反対は?」  掠れた声が熱っぽい吐息と一緒に肌を掠めた。 「……はん……たい? ……、っく……」  前立腺を執拗に擦りあげられる。  気持ちよさが強すぎて、なのにもっとっていうように自分でも腰を動かして受け入れる。 「嫌いの反対……は?」  体温が溶け合ったように俺のか智紀さんのかわかんねーくらい身体が熱い。  快感に喘ぎまくって目の前がぼやけて俺を抱き締めるように密着してきた智紀さんの背中に自然と手を回した。 「俺のこと嫌いじゃないなら、なに?」 「……す……き…?」 「俺も好きだよ、捺のこと」 「……っあ」  俺と智紀さんの腹部に挟まれた息子が潜り込んできた手に先端をぐにぐにと弄られる。  肌を濡らす先走り。 「もう一回言ってみて」 「……は…っ……、な…に…っ」 「俺のこと、どう思う」 「好……き……ッ、ン…ッ、んん」  もう一度そう言った途端口を塞がれて、さらに大きく脚を開かされて突き上げられはじめた。

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