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第69話

 久しぶりの優斗さんのバスルームで、優斗さんのシャンプーとか使ってると変に照れくさい気もする。  ボディーソープをたっぷり泡立てて身体を洗いながら……後はどうしようか迷った。  一応……掻き出してもらったけど、大丈夫かな。  智紀さんのオフィスでのことを思い出して――頭からシャワーを浴びながら壁に何度か頭を打ち付けた。  あー……もう、俺ってなんか……。 「……どーしよ」  とりあえず後孔に指をあてがってみる。  けど――……。  ムリムリムリムリ!!!!  とてもじゃないけど自分の指突っ込むなんてできなくって、自分のヘタレさにうんざりした。  でも……と思って頑張って指いれて……。  ううう、わかんねーし!!!  半泣き状態でぐだぐだどうしようかって無意味に指突っ込んだまま悩んでいるうちに結構長くシャワー浴びてしまってた。  あんまり長く入っててもおかしいよなぁ……。  ちらりバスタブ見て、優斗さん仕事で疲れてるだろうし、お湯いれておくことにした。  最後にもう一度念入りに身体洗って、お湯張り設定してバスルームを出る。   脱衣所には俺がいつでも泊れるようにって置きっぱなしにしてた洋服とバスタオルが用意されてた。  それに着替えてリビングに行くと優斗さんは部屋着に着替えててビールを飲んでた。  髪を拭きながら部屋に入ってきた俺に視線を向ける優斗さん。  リラックスムードの優斗さんは……なんか妙にセクシーだったりするんだよな。 「綺麗に洗ってきた?」  からかうような口調に、俺は視線を泳がせて頷く。 「あの…風呂、お湯入れてる」 「ありがとう。さっきお寿司頼んだから、俺が入ってるときに来たら受け取っておいて。お金はここに置いてるから」 「うん」  優斗さんの横に座ると、飲みかけのビールを差し出された。 「飲む?」 「ん」  受け取って飲む――んだけど、優斗さんが俺をじーっと見てるからちょっと飲みにくい。 「捺くん、いい匂いする」 「へ……?」  耳の後あたりに優斗さんの指が触れて首筋に降りてく。  それだけのことにゾクっとしながら、平静さを装って、「そっかな」なんて返す。 「うん。――髪からいい匂い」  首筋を今度は上がって、そして髪に差し込まれた手がゆっくり俺の髪を梳く。 「……優斗さんが使ってるのと同じだよ?」 「そうなんだけどね」  笑いながら優斗さんは俺の髪を撫で続けて耳元に顔を近づけてきた。 「捺くんが俺のを使うと……美味しそうな匂いになる」 「……」  ぺろり、と首筋が舐められて、それだけなのに身体が反応してしまった。  美味しそうって……!  今日の優斗さんはいつもよりスイッチが入り続けてんのか、色気っていうかフェロモンががんがん出てる。  それにあてられたらそりゃこっちだってスイッチはいりまくるし。 「……ん」  今度を耳たぶを舐められて、甘噛みされた。  耳にかかる息が熱くって心臓が跳ねてしまう。  あー、もうまじでヤバい――……。  玄関の続きが始まりそうな色のついた空気。  だけど――それを壊すように鳴った軽快なメロディ。 「……お風呂入ってくるね」  お湯が溜まったことを知らせてくれるその音に、優斗さんはあっさりと立ちあがって俺の頭を一撫でするとリビングを出ていった。 「……」  残された俺は半勃ちになってた息子をなだめながら残り少しだったビールを飲み干した。  それから少ししてインターフォンが鳴った。  さっき優斗さんが言ってた寿司の配達。  近所にあるお寿司屋さんで結構美味しくて、俺も食べるのは二度目。  そんなにお腹すいてるわけじゃねーけど、美味しいものは別腹だよな。  配達してきたおっちゃんから受け取って、寿司桶に入った綺麗に並べられた寿司を見ながらリビングに戻ろうとした。  うまそうでひとつ食べたくなるけど、優斗さんが戻るまで我慢我慢なんて思ってたら、ケータイの着うたが聞こえてきた。

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