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第72話

 ゆっくりと埋められた指。丸々一本を飲みこんで、そして動き出す。 「……ん…っ、あッ」  奥を探るようにして動く指が呆気なく俺のイイところを見つける。 「……ッ……ゆう、……っ」  首を振った。  必死だった。  だって容赦なくそこを擦りあげてくる指に、バカみたいに声が出ちまいそうになる。  こんな状況なのに快感に溺れてしまいそうになる。 『ちゃんと手動かさないとだめだよ。捺、いまどこが気持ちいい?』  俺の声の変化に気づいたのか、まるでこっちの様子がわかってるかのように、囁かれる。  指を挿入されてつい止まってた手をまた動かしだしながら、でも唇を噛む。 「……捺くん」  優斗さんがのしかかってきて唇を舐められる。 「ここ好きだよね?」 「……っ」 『なーつ?』  頭が――おかしくなりそうだ。  おかしいってわかってんのに、イイところばかり刺激されて射精感が込み上げてきてた。 「捺くん」  言っていいよ、って優斗さんが目を細める。 『気持ちいい?』  イってしまいなよ、って智紀さんの声が俺を揺さぶる。 「……く…っ……は…」  俺ってバカ? ヘンタイ? 猿?  息子はこれ以上ないってくらい硬くなってだらだら涎たらしまくって、頭ん中はどんどん霞んでく。 『捺、いま後弄られてる? そろそろイきそうだろ?』 「……や……っ、む……り……っ」 『気持ちいい、って言ってみな?』 「……ひ、…っぁ」  指が二本に増やされて、難なく飲み込んだ俺の中はそれを締めつけて。  挿送じゃない、ただひたすらに奥の一点を刺激してくる動きに合わせて俺の手も早く動いて。  も――……。 「……っ……きもち……い…い」  どうしようもない熱さに、俺は無意識に言ってしまってた。 『――かわいいね。本当に、捺は。ね……?』  智紀さんの声が俺を侵して、優斗さんの指が俺を犯して。  頭ん中はもうぐちゃぐちゃで。  急激に沸き上がる射精感に腰が浮く。 「……ッ……あ、く……っ」  だめだ。  こんな状況でイクのはダメだってのと、  もうイクのを我慢なんてできねーつーのと、  両方が混ざって、弾ける。 「……ん……っ……も……っ」  優斗さんの指の動きを感じながら、俺は欲を吐き出すために手の動きを早めて―――。 「……ッ……ぁ」  もう少しでイキそうになって。  そして――……。 『ストップ。捺。手、止めて』  少し強く有無を言わせない声がして、俺は理解する前にとっさに手の動きを止めた。 『ごめん、キャッチ入った。残念だけど、俺はここで退散させてもらうね。ああ、捺くん? "俺の代わり"にもう手は動かさなくっていいからね。ていうか――動かしちゃだめだよ』  口早に言って、最後ふっと笑う声は受話器越しにリップ音を響かせて――切れた。 「……」  ――……え?  電話、切れ……た?  イきかけて熱に思考が飛んでた俺は少しづつ智紀さんの言葉を飲みこんでって、現実に戻る。  通話が切れたツーツーっていう電子音に俺は戸惑ってスマホを見つめて。 「……ンっ」  後孔から引き抜かれた指に、身震いした。  喪失感に身体が疼く。  もうちょっとでイキそうだった息子はびくびく脈打ったままで。  だけど。 「――トイレ、行ってくるね」  スマホから見上げた先、優斗さんが俺に笑いかけてすぐにベッドから降りていく。  そしてドアが開いて閉まって……。 「……え?」  一人残された俺は、ベッドの上でぽかんと、した。

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