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第93話
優斗さんは俺を見ていて、
「俺、俺……」
めっちゃくっちゃ声裏返るの覚悟して、言った。
「俺――……優斗さんのこと、好き」
って、
……言った。
い……言ったぁぁあ!!!!!
うっしゃー!
よくやった俺!
ついに言った、俺!
ああああ、まじで心臓が壊れそうなくらいバクバク言ってんだけど!!!!!
つーか、顔真っ赤になってるよな。
寒いのに顔すっげぇ熱い。
あああ、言った。
言ってしまった!!!!!!
ついに告白して一気にテンパった俺は――まったく優斗さんの反応がないことに、気づいた。
きょとんとして顔を上げて優斗さんを見ると、優斗さんは呆けたように俺を見ている。
「……優斗さん?」
「……え? あ、えと……あの、捺くん、俺のことが好きなの?」
「へ? う、うん。お、俺もずっと……優斗さんのこと好きでしたっ」
真っ赤になって叫ぶ。
けど、優斗さんはまだぽかんとしていて。
「……どうかした?」
まさか半日で俺のこと嫌いになったとか!?
って焦ってたら、
「えっと……さっきの"ごめんなさい"っていうのは?」
そう訊かれた。
「あれは……その、優斗さんの好きかもって気づいてたのに……智紀さんに流されるままにヤって……後悔してるから。それで謝ろうと思って」
「……」
いくら百戦錬磨な智紀さんに迫られたって、本当は流されるべきじゃなかったって思う。
智紀さんは優しくって楽しいし、好きだけど、"友達"としてだったんだから、快感にながされるべきじゃなかった。
「……ほんとごめん。でもちゃんと、智紀さんとは話してきたから! ちゃんと、ゆ、優斗さんのことが好きだって言ってきたから!」
優斗さんに会う二時間前、6時に智紀さんと待ち合わせて話してきた。
優斗さんのこと、智紀さんと会ってたときのこと、そのときの気持ち、話してきた。
『智紀さんと会うのは本当に楽しかったし、本当に好きだけど……。でも優斗さんに対する"好き"とは……違うんだ』
そう言った俺に智紀さんは苦笑して俺の頭を撫でた。
『あーあ、振られちゃった』
『ごめん』
『謝らなくていいよ。勝率は3割程度かなって思ってたし。まぁ……かなり落ち込むけど』
『……ごめんっ』
『謝らないで、謝られると逆に引きとめたくなる』
『……え』
智紀さんはクスクス笑って、俺の頭に手を置いたまま顔を覗き込んできた。
『……正直、優斗さんより俺と出会うのが早かったら捺を好きにさせていた自信はあるけどね』
『……』
『まぁそんなことただの負け犬の遠吠えだけど。――でも、優斗さんと幸せになって、捺くん』
『……ありがと』
もう一回俺の頭を撫でた智紀さんはすっげぇ優しく笑ってくれて。
俺は本当に申し訳ないやら、ずっと一緒にいてくれたことを感謝しながら、笑顔を向けた。
『じゃ、最後に……。なーつ、キス、していい?』
少し気持ちが落ち着いた俺にいきなり智紀さんがそんなこと言いだして、は?、って言いかけた瞬間。
唇が――俺の頬に落ちた。
『っ!!』
びっくりして頬を押さえる俺に智紀さんは屈託なく笑った。
『優斗さんとお幸せにっていう餞別?』
『餞別って!!』
『別にほっぺだからいーでしょ』
『と、智紀さんー!!』
「……」
って、最後まであの人はあの人だったな、なんて回想終了。
「智紀さんから、なにかされた?」
「えっ?」
思い返していた俺の顔を覗き込んで優斗さんが言う。
「顔真っ赤だよ」
「え、いや、なんか"優斗さんとお幸せに"って餞別にほっぺたチューされただけ! それだけだから!!!」
「へぇ――、それは妬けるね?」
「……へ」
ぽかんってしたら手を引っ張られて――抱き締められた。
「捺くん」
一気に暖かい腕の中に閉じ込められて冷えてきてた頬がまた熱くなる。
「は、はい」
「もう一回言って?」
「え?」
「俺のこと、どう思っているか」
「……え、……えと」
頬に手を添えられて顔のぞき込まれて至近距離で見つめられる。
……だから、イヤだったんだよ、近づくの!!
もうすんげぇ勢いで心臓がさっきよりもMAXでドキドキしてる。
「……あの……、優斗さんが……好きデス……」
うぁあああ! 恥ずかしい!
「もう一回」
「……ま、まじで好きだからっ!!」
赤過ぎる顔でそう叫んだら――優斗さんの目がすっげぇ優しく細くなって。
「俺も好きだよ」
って、唇が触れ合った。
何回もキスしたことあるのに、気持がはっきり繋がってるっていうだけで全然違うんだって初めて知った。
甘くなぞるように優斗さんの舌が俺の唇を舐めて、自然と口を開けて、舌が絡み合う。
好きだって言われて
好きだって伝えて
そうしてする初めてのキスはめちゃくちゃ気持ちよくて、幸せで――俺を抱きしめる優斗さんの手に力が加わるのを感じながら、俺も優斗さんの背に手を回した。
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