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第5夜 第31話
強く言い切った俺に優斗さんは目を細めて掠めるようなキスをほんの一瞬落とした。
横断歩道で渡ってる人もいるし、たぶんこっちは見てないとは思うけど、でも、こんなところでキスされるなんて思ってもみなかったから固まる。
優斗さんはまた小さく笑うと今度は俺の耳を甘噛みした。
「――でも、内緒にされてたのは寂しいし、あんな可愛いことデートしてたってのは妬けるから、帰ったらお仕置き、だね?」
視界の端にはいる横断歩道の青信号がチカチカ点滅している。
俺は耳に与えられた刺激に体温が一気に上がってくのを感じて、固まり続けてた。
そして信号が青になって車が動き出す。
優斗さんのマンションに着くまでの間――お仕置きってどんなんだろうってドキドキしてる俺はマジでバカなんだと思う。
それからしばらくして優斗さんのマンションに着いた。
「そういえば、お腹空いてない?」
エレベーターの中で優斗さんが訊いてくる。
そういやもう6時過ぎてるんだよな。
「んー、ケーキいろいろ食べたし、まだあんまり減ってないかな」
佐伯さんのセットからサンドイッチとか貰って食べたんだよなー。
何気なく言いながら、あ、って口をつぐんだ。
自分から今日の話出してどーすんだよ!
ちらっと優斗さんの様子をうかがったけど、
「そっか。俺もまだいいかな」
ってそれだけだったからホッとする。
余計なこと言わないようにしないとな……。
そんなこと考えてる間にエレベーターは止まって、優斗さんの部屋に行った。
玄関入って、当たり前だけど俺達以外誰もいない空気に安心する。
靴脱いでたら手が差し出されて優斗さんを見ると、俺の手を取った。
手繋がれて不思議に思ってるとリビングじゃなくって俺達が入っていったのは寝室。
薄暗い室内。
ていうか寝室に入った時点でハンパなくドキドキしてきた。
ベッドに近づいて行って、そんで。
「……優斗さん」
あっという間に俺はベッドに沈んで、上には馬乗りになった優斗さん。
数日前一人でこのベッドでうたた寝したときとは違う。
リアルに優斗さんがいて、やっぱドキドキする。
ほんっとーに俺、最近やばいくらい乙女な気がする。
自分にうんざりするけど、でもしょーがない。
つか、早く触ってほしい。
少しベッドが軋んで、優斗さんが覆いかぶさってくる。
そんで、キス。
ちゅ、って触れ合うだけのもの。
また軽く触れてきて、その次はぺろっと唇舐められて、そして下唇を甘噛みされる。
「……ん」
たったそれだけなのに身体が疼く。
優斗さんの首に手を回して、キスしようとしたらキスされて、でもまたすぐに離れた。
「……優斗さん……」
「なに?」
「キス、したいんだけど」
「してるよ?」
「……ベロチューがいい」
ちょっと口尖らせると、優斗さんは目を細めて、やっぱり触れるだけのキスを落とす。
「捺くん、忘れた?」
「なにが……?」
「いま、お仕置き中だよ」
優しいけど、どこかからかうような笑顔に俺はうっと詰まった。
……これお仕置き?
もしかして焦らしプレイとか!?
「……俺、なんか激しいのとかがいい……」
「なに、激しいのって」
「……えー……と」
アホなこと言ってるって自分でも自覚ある。
優斗さんはおかしそうに吹き出している。
「どうしようかな。そういえば、捺くん。頬っぺたへのキスはどっちだった?」
「……へ」
頬っぺた……って、もしかしなくても佐伯さんのあれだよな!?
「……み、右?」
気まずくて、へらっと笑う。
「そっか」
じゃあ、って優斗さんが言って、左頬にちゅ、とキスして、そんでベロって舐めてきた。
「……っ」
そのまま舌が動いて俺の耳をぱくりと咥える。
ざらついた舌が這う感触と吐息がかかる感触に背筋がぞくぞくした。
くちゅくちゅ、とわざと音をたてて耳がしゃぶられる。
耳たぶを甘噛みされて、耳孔に舌が差し込まれて。
「……ン…っ」
耳弄られてるだけなのに俺の息子は反応しだして、勝手に甘い吐息が出ちまう。
気持ちいい。
でも優斗さんは耳だけで、ほかは一切触ってこない。
俺のが硬くなってきてんのも絶対気づいてるくせに触ってくれないし、キスもしてくんないし。
……焦らしプレイってだからイヤなんだよ!
俺がする分にはいいんだけどな。
「優斗さんっ」
「なに?」
耳を舐めながら、そのまま囁いてくる。
ダイレクトに響く甘い声に優斗さんにしがみついて、首をひねって顔を見た。
「舐めてたんだけどな」
ぺろっと今度は俺の鼻の頭を舐めて妖艶に笑う。
「……キス、したい」
「ん」
ちゅ、とまた触れるだけのキス。
「やだ」
お仕置きだから我慢しなきゃなんねーんだろうけど、我慢できるはずがない。
ぐっと顔近づけて唇を塞ぐ。
舌を無理やり差し込んで、優斗さんの舌を絡め取った。
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