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第5夜 第39話
月曜日は日曜の雨が嘘みてーな晴れ。
新しい一週間はいつも通りに始まった。
けど、俺自身は週末から変わらずに鬱鬱としてた。
一応ちゃんと普通どおりにはしているけど。
学校じゃ和や……実優ちゃんたちといつも通りに喋るし、笑うし。
夜だって優斗さんと電話で喋るし。
ただ夜の電話はたまに不自然なくらい喋ってしまうか沈黙してしまうことがあるけど。
そしてあの日聞いた優斗さんの過去には一切触れないまま。
知った上でいつも通りに接してるっていうより――知ったけどどうすればいいのかわかんねーから逃げてる、っていうだけだけど、俺の場合。
その週優斗さんは仕事が忙しいみたいで帰りも遅くって平日に会う機会はなかった。
それにホッとしてしまう俺って……なんなんだろう。
会いたくないわけじゃねーのに。
「――……つ」
なんで俺ってほんとに……。
「捺!!」
ぼうっとしてたらいきなり耳引っ張られて大声で呼ばれた。
「ってぇ! なんだよ、七香」
「なんだよじゃないわよ、さっきから呼んでんのに」
今日は金曜。とっくに全部の授業は終わってHRも終わった、らしい。
帰る準備し終えた七香。そしてすぐ近くに実優ちゃんたちが苦笑しながら俺を見てた。
「考え事してたんだよ」
「どうせ今日の夕食のことでも考えたんでしょ」
「……小学生か!」
んっとに、七香はうざい。
帰り支度を俺も適当にしてカバン肩に担ぐように持って、先に教室を出ていった七香たちの後を追った。
「でさー、私は来週でいいと思う」
「そうだね、私も」
「バカだからな……」
「まぁまぁ。じゃあ私が明日――」
俺を除いた四人は騒ぎながら少し前を歩いてる。
俺はとてもじゃないけどみんなのテンションについてく気にもなれなくって傍観してた。
頭ん中はぼーっとしてるか優斗さんのこと考えるかしかできねーし。
ため息が出そうになるのをやり過ごして空を見ると雨雲に覆われてる。
梅雨時期だからいつ雨が降ってもおかしくない。
今日は金曜日で明日は土曜日で……いつもなら泊りに行くかもって感じだけど今日は予定にない。
優斗さん明日の土曜日も出勤だからっていうのが理由。
別に――俺が嫌がったとかじゃねーし。
日曜日は休みみたいだし明日の夜はたぶん泊りに行く。
行かなきゃ……ダメだよな。
まだどう接していいのかわかんねーし、正直普通にできるかわかんねーけど。
でもほんと……会いたくないわけじゃないから、逃げたらダメだって思う。
でも、ため息が出ちまうけど。
「捺ー! うちらいまから買い物行くけどどうするー?」
前見たら七香たちが立ち止まって俺を見てた。
「和も行くのか?」
「ああ」
「ふーん」
まあこいつは実優ちゃんがいるなら行くか。
ちらっと実優ちゃんを見てみたらちょうどばっちり目が合った。
にこっと笑いかけられて、俺もへらって笑い返す。
……ズキズキ心臓が痛んでさりげなく視線を七香に移した。
「俺、いーや」
「あっそ。んじゃねー」
えー、とか言われると思ってたらあっさり頷かれて七香たちは俺に手を振って去っていった。
なんかあいつら今日異様に盛り上がってるけどなんなんだろ。
……どうでもいいけど。
一人駅に向かって改札を抜ける。
生ぬるくて蒸し暑い空気がすっげー不快。
じんわり滲む汗を手の甲で拭いながらさっき目があった実優ちゃんのことを想った。
あの話を聞いてから優斗さんだけじゃなく、実優ちゃんのことも改めて考えたりしてた。
またぼうっとしてる間に電車がやってきて何度目かのため息をつきながら乗り込んだ。
***
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