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第5夜 第48話

「……んっ」  触れるだけ。  なのは一瞬で、すぐに舌が入り込んでくる。  舌同士が触れ合うけで背筋が震えてしがみつくように優斗さんの背広を引っ張った。  絡みついてくる熱さにあっという間に夢中になってしまう。  角度を変えてキスするたびに待ってられなくって俺から優斗さんの咥内に舌差し込んで貪るように絡めて這わせて。  んで、仕返しって感じでもっと深いキスされて追い詰められて。  なんか――俺もだけど、優斗さんもちょっと余裕がないような、そんなキス。 「……っ……は…ぁ」  ずっと長い間交わしたキスのせいで口の端から唾液がこぼれてる。  それを優斗さんが親指で拭ってくれて、そんでそれを舐め取って……。  あー……もうやばいってくらい頭がクラクラして俺の息子は完璧臨戦態勢で、優斗さんの胸に顔をうずめて背中に手を回した。  そしたら優斗さんも同じように抱き締めてくれてキスのせいで荒くなっていた息をゆっくり整えた。 「……捺くん」  あまったるい声が耳元で響いてそのまま耳たぶがぱくりと咥えられる。  密着した身体から優斗さんのももう硬くなってんのがわかって頭ん中が沸騰するみてーにたぎってくらくらした。 「……っ」  優斗さんに触れられるだけでバカみたいに声が出る。  多分お互い思ってることは一緒のはずだ。  俺の耳を解放した優斗さんが唇が触れそうな位置で見つめてくる。 「……寝室行く?」  結構間をあけて、優斗さんが聞いてくる。  その目がそう問い掛けるまでに、躊躇うように揺れたのは優斗さんが優しいから。 「……うん」  すぐに頷いたら、安心したように優斗さんが微笑んで俺を抱き上げた。 「わっ! 一人で歩けるよ!」  慌てるけど優斗さんは笑うだけでそのまま寝室まで俺を運んで行った。  薄暗い部屋のベッドに下ろされる。  優斗さんがネクタイを抜き取る音が小さく響いて、上着を脱ぐのを心臓バクバクさせながら見つめる。  ほんの二週間ぶり…なんだけど、すっげえ久しぶりな気がする。  このベッドにふたりでいたのは先週もだったけど、あのときとは……俺の意識が全然違ってて。  ギシッとベッドが軋んで顔を上げたら優斗さんがゆっくり俺を押し倒す。  覆いかぶさられてキスされて、ギュッと優斗さんの背中に手を回して、耳元で……緊張しながら口開いた。 「……あのさ…優斗さん。少しだけ……話したいことがあるんだ」  優斗さんの動きが止まる。  このまま――前と変わらないように抱き合えば、前と同じように戻るんだろうけど……。  でも、優斗さんが過去を話してくれたんだから、俺もちゃんと……話さなきゃならない。  ちゃんと、向き合わなきゃ、いけないんだ。  多分……たいしたことは言えないんだけど。 「……なに?」  優斗さんは優しく言って俺を抱えるようにして横向きになった。  向き合った形で抱き締めあったままの状態。  顔を合わせる度胸がなくて、優斗さんの肩に顔を伏せる。 「俺……ほんとは……実優ちゃんにヤキモチ妬いてた……んだ」  できたら言いたくなんてなかったこと。 「優斗さんにとって……実優ちゃんが大切な家族って……わかってたけど……なんかモヤモヤ……して。でもそんな……実優ちゃんに対してそんなこと思ってるとか優斗さんに思われたくもなくて……。でもイヤで……それで先週なんか、ふたりが電話で喋ってんの聞いてたらイライラして……」  ああ、全然頭がまわらねぇ。  情けねぇし、申し訳なくって息苦しいし。 「なんか……、ごめん」  だっせぇ……よな。  ぐっと額を優斗さんの肩に押し付けて内心ため息つく。 「……なんで謝るの?」 「……だって……俺……実優ちゃんと優斗さんの……ことわかったつもりになって……でも本当はちゃんとわかってなかった……。優斗さんが先週……両親のこと話してくれて、それで俺、なんか」  なんでちゃんと喋れねーんだろ。  結局考えまとまってないまんまだから、自分でもなに言ってんのか意味わからねーし。 「……なんか、ほんと……ちゃんとわかったから。……優斗さんが実優ちゃんのこと……どれだけ大事にしてるかって。だから…もうヤキモチは妬いたりしてない。なんかそういうのはもうマジでなくなったから」  ぽんぽんと優しく優斗さんが頷きながら俺の背中をあやすように叩いてくれる。 「うん。俺こそ、ごめん。本当は前から捺くんが実優のこと気にしてるの……気づいてたんだけど、どうしたら捺くんに安心してもらえるのかわからなくて」 「……いや……俺が勝手に、そのモヤモヤしてただけだし。それに……そのせいで先週……過去のこと話させてごめん」  少しだけ身体を離して、優斗さんの胸に頭を小突かせるように頭を下げた。  途端に俺の背中にまわっていた腕に力がはいった。 「本当に捺くんが謝る必要なんてないよ。逆に俺がごめんね。あんな重い話してしまって」 「……大丈夫。俺は知って……よかったって思ってる」 「……」 「でも先週聞いたとき、なんて言えばいいのかわからなくて……なにも言えなくて、ほんとごめん」 「もう謝らないで、捺くん。俺は、今日こうして捺くんが会いに来てくれただけで嬉しいから」 「……ん」  ちらっとようやくの思いで顔を上げてみる。  目を細めた優斗さんと目があって、キスされた。 「……ん」  触れるだけのキスをいくつかして、なんかすっげぇ心が軽くなった気がしてぎゅーっと抱きついてみた。

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