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第23話 恣意的でなく意図的に(1)

 上弦はまた祭りに出る準備があるからと、昼食のあと出掛けてしまった。今夜は、どうしようか。昨日の夏祭りで一応、眞玄の目的は達成していた。 (朝まで一緒にいたのに、また朔に会いたい)  思い出したら、顔がちょっとゆるゆるになった。  今朝も風呂で朔を洗ってあげたり、洗ってもらったりしていたらまたムラムラしてしまい、つい朝からお願いしてしまった。 「朔、お願いフェラして」 「……はっ?」 「それとも、もっかい挿入までいっとく? どっちがいいか、選んでいいよ」 「や、選んでって……」  困っている顔が、やけにいとしい。 「朔にいきなり無理させたくないけど、勃っちゃったから、これなんとかしてくれると嬉しいなぁ。……朔のピアスの舌で舐められんの、俺の夢なんだよねえ」 「ええぇ……何その眞玄の夢、小さすぎ」  だいぶ躊躇していたものの、結局朔は恐る恐るぎこちない口でしてくれた。一線を超えたら、結構開き直るタイプかもしれない。 「ピアスが、先っぽに当たってる……朔、俺以外のチン○舐めないでね。これヤバいわマジで」 「……するかよ」  朔の返事は、ちょっと自棄になっているようにも聞こえた。変に興奮してしまい、結局そんなにもたなくて顔にぶっかけて、かなり扇情的な視覚攻撃にうっかり喜んだら変態と罵られ、軽く殴られた。 (顔射はまずかったね……でもしっかり目に焼き付けた)  小さな夢を叶えられて嬉しいが、そのあと少し困った事態になった。 「なあなあ……昨日、眞玄は確か、そういうのはまた今度って言ったよな」  風呂から出てプリンを食べていたら、朔が言いにくそうに切り出した。 「――ん、えっと。なんだっけ?」  昨夜はとにかく朔を攻略するのに頭がいっぱいで、その場しのぎのことを口にしただけだった。何を言われているのか急にはわからなかった。 「眞玄が自分で言ったじゃん。……ブチ込みたいの? とかなんとか!」 「朔。朝っぱらから何を言い出す」  さっき自分が風呂場で何を要求したのかも忘れたような棚上げをし、眞玄はそういやそんなかわし方をしたと思い出した。覚えていたか、と内心舌打ちする。 「大体さー、朔は一番最初、俺とエッチすんの拒否ったじゃん。それなのに、今度は俺にそういうこと求めちゃう?」 「そんなの今更持ち出すなよ……結局俺のこと好き勝手したくせに。マジでどうにかなるくらい、ヤバかったよ!? ずりぃよなほんと」  開き直った朔は、ちょっと手強い。  一番最初というのは、眞玄が唐突に一線を超えようなんて言い出した時のことだが、その際朔は確か「そういうのなし」と強く肉体関係を拒否した。 「そんなに悦かった? 朔の鳴き声、確かにヤバかったな……エロ可愛かった……しかも朔の汗とか精液の匂いで、俺のリミッター外れっぱなし。相当ヤバかったよね、俺も」 「なっ! そういうこと、話してるんじゃなくて!」 「……朔、」  プリンの容器を置いて、顔を近付ける。可愛い文句を言っている朔の、アッシュブラウンの髪に手を伸ばし、引き寄せた。いくつかピアスの開いた耳を指でなぞり、そのままキスをする。 「プリンの、お裾分け」  朔に口移しをして、ちょっと誤魔化してみた。急にそんなことされて顔を赤くしたものの、朔は騙されてくれなかった。

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