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第64話 吐息(3)

 舐められている眞玄は、こちらをじっと見つめている。気持ち良いのか、その視線は情欲にまみれていたが、それでもやはり余裕だ。黙ってろと言われたので、黙っているのだろう。いつもなら結構、色々言ってくる。基本的にセックスの際、何故か「それ今言う?」というような会話を振ってくることが多かった。  眞玄の余裕を崩すべく、先程袂から取り出したローションがベッドの上に転がっているのを確認し、手を伸ばす。 「朔、……それ」 「借りる。……痛くないように、ちゃんと、するんだろ?」 「……ですよねー」  ちょっと困ったような声の眞玄の脚を少し開かせて、口で愛撫しながらも指先を這わせてみる。引き締まった眞玄の体は、やはり男を受け入れるようには出来ていなくて、濡らした指の動きに抵抗しているように思えた。 「俺の最初ん時は、力抜けって言ったろ……」 「朔はえらかったねえ。ごめんね。大変だったろ」 「……そんなこと言ってもやめねえし」 「わかったよ……力抜くから、しなよ……せめて、フェラは続けといて。気持ち良いから。朔、上手になったね」  本当に仕方ない感じで呟いて、眞玄が深呼吸している。ぶるりと体を震わせて、無駄な抵抗をやめたのか朔の指を受け入れる。温かい体の中は、慣れない感覚に怯えるように脈打っていて、時折ぴくんと締め付ける。 「は……恥ずかしいね、これ」 「今更」  眞玄を舐めてやりながら、指をゆっくりと動かして中を探る。嫌がっているようにも思える感触は、それでもやがて変化する。朔の口元にあるモノが、ぬるぬるとした雫で濡れて、今にも溢れそうだった。 「さっきも言ったけど……事前に教えろよな」 「何をだよ……」 「イきそうになったら。マジ顔射はやめて……そういう趣味、俺、ないから」 「だって朔、教えたら……寸止めしそうでやだ」 「しねえから。ちゃんと手で続きしてやるから、安心して申告してくれる」 「……もう出る」 「えっ!?」  そんな発射寸前で言わないで欲しかった。唐突に申告してきた眞玄に対応出来ず、しかし顔にかけられるのもどうかと思った朔は、思わず反射的にそれを口の奥に咥え込んだ。  瞬間体が強張って、朔の口の中に独特のとろっとした体液が放たれる。そのままうっかり嚥下してしまい、ちょっとむせた。 「え……朔、飲んじゃったの? マジで?」 「もっと早く言えよ!」 「……どんなだった? 俺の精液の味って」  妙に嬉しそうに聞いてくる眞玄に、朔は顔をしかめる。何故こんなことで喜んでいるのだ、この男は。 「味わう暇もなく飲んじまったよ……うぅ」 「しょうもなー……口ゆすぎなよ。ペットボトルの水、あるから……飲んで」  眞玄の飲みかけの水が床に転がっていた。仕方なくそれを拾い上げ、ごくごくと飲むと少し落ち着いた。 「――たく、眞玄ってさ。普段と耐久力が違くね? 口でされると、すぐイっちまうの、なんでだよ」 「ピアスがヤバいんだってば……俺のことぐりぐり攻めるんだもん。……んで、どうすんの、次。もしかして、そろそろ本番行っちゃう……?」 「平気なん?」 「……知らないよ、そんなの」

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