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七話:『それは如何いう流れだ』

佐々木の報告によるところ、更紗はデパート到着後地下一階にある和菓子店に行く前に、同フロアのレストルームに立ち寄ったそうだ。  ノート型のパソコンを用意させて、デパート側から取得した防犯カメラの映像を確認する。 「菓子は受け取ったのですか?」 「先生。菓子の行方より弟の心配をして頂きたい」 「あの子は大丈夫ですよ。菓子はどうなりました」 「私が受け取り使用人の増田氏に手渡しました」 「冷蔵庫の中ですか。報告を受けておりませんね」 「若狭先生、菓子よりも大事な物がこの世にはあるんです」  寧ろ此の世の殆どが菓子よりも優先すべきことで占められているはずだ。  早送りをして写し出されたのはデパート地下一階フロアの端に設置された防犯カメラの録画映像だ。  エントランスの真ん中にエレベータがあり、その左横に避難階段、さらにその奥に青と赤で色別されたピクトグラムが見える。  画像の表示時刻が十八時七分の時点で見慣れた少年が通り過ぎた。  半袖のカッターシャツ。  濃紺色のスラックス。  学院既定の靴と鞄。  正面で有れば、ネクタイを締めているだろう。  後姿だが、間違いない。  弟の更紗だ。  竜ヶ崎学院男子中等部の制服を着た更紗がレストルームに入ったのだ。  画面を眺めていると中年の男性が入れ替わる様に出てくる。  その二分後、更紗と同じような年代の少年一人出てくる。  十八時十分と数字が進んだところで、トロリーケースを手にスーツ姿の男がレストルーム入っていく。  十八時十八分とデジタル時計がカウントした所で先ほどのスーツ姿の男が、レストルームから廊下へ出る。  車輪の動きが気になるのか、一度体を傾げ動きを確認してからトロリーケースを引きそのままエレベータに乗り込む。  二十秒後、清掃スタッフがダストカートを押しながらレストルームへ入っていく。  先程のスーツ姿の男がレストルームから出た後、何時まで経っても更紗は姿を現さない。  錦ははっと息をのんだ。  僅か八分の間に何かが起こったのだ。  何が有った?  映像を止め、若狭が画像を巻き戻しする。  トロリーケースを持つ男の行動が巻き戻されていく。  そのまま、拡大をすれば――良く知る男の顔が写し出された。  

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