22 / 245

九話:『例え天の川が氾濫しても』

【君がこの手紙を読んでいる頃には僕はもう君の側に居ると思います。デートとても楽しみです。地図を添付しているので気を付けて来て下さい】  メッセージを終えた空欄スペースに、頭上で手を合わせた鳥獣戯画の兎と蛙が描かれている。 「なんだこの絵もメッセージだろうか?」 「これは手を繋ぎデートしてる絵でしょう。七夕は予報によれば雨ですし、翌日錦が学校があるから昼の内にプラネタリウムで待ち合わせてデートしたいのでしょうね」  目的地は今年の春に完成した外資系ホテル『ジャルダン・デザンジュ』。チケットの住所と地図を見て、そこで初めてホテルのアミューズメント施設の一つと知る。 「それは海輝さんが関わったプロジェクトのうちの一つですよ。比較的新しい物ですね」  そうだ完成したばかりにも関わらず、ホテルの部屋は年内はすでに満室で予約が取れない程の人気ぶりだ。宿泊客でなくても、アミューズメント施設の利用は可能な事から、すでにドームシアターのチケットは、一年先まで予約が埋まっていると以前テレビで見た記憶がある。  七夕、ハロウィン、クリスマスなどのイベント時には、それに合わせた特別プログラムを実施している。七月一日から七日まで期間限定で天の川のプログラムを上映しているらしい。  競争率がかなり高かっただろう。  それとも、ある程度の融通を利かせたのだろうか。 「こんな真似してまで……強行するつもりかあいつは」 「海輝さんなら例え天の川が氾濫してもお前に会いに来るのでしょうね」

ともだちにシェアしよう!