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『強情な君も大好きだ。でも僕は君に関して遠慮しないから』

「疲れているんだな。休め変態」 『休みだから君に会いに行くんじゃないか。エッチな事よりデートが目的だから!! デートだけで良いから! ちょこっと錦君の香りを吸い込んだり、抱っこしたり頭撫でたり手を繋いだりするだけだから』  つまみ食いしたいんじゃないのかと揚げ足取りをしたかったが、墓穴を掘るので止めた。  深い溜息を吐く。 「あのな海輝。六日までお前は仕事だと聞いてる。七日は休日だが翌日は仕事だろう? 無理する必要が何処にあるんだ」 『錦君。僕は無理なんかしていないよ。君に会いたい理由? そんなの君が好きだからに決まってるでしょ。大体ね、君。好きな子の顔を見るのに特別な理由がいる? 理由がないと恋人と会えないの?』  一気に血が全身を巡り、かっと発熱をしたように熱くなる。  顔が熱い。  瞼の裏側がじりじりと焼ける。  胸が波打つように鼓動が激しくなり痛みを伴う。  酸素が足りていない様に頭がくらくらする。  海輝と話していると時々こんなふうに、おかしくなる。 『錦くん?』 「いや、何でも無い」  恋人。  そうだ。  それが今の錦と海輝の関係性だ。  義兄弟だった彼とは紆余曲折の末に結ばれた。  紆余曲折という言葉で収まりきらない嵐を経験した。  傷付いて泣いて怒って嫉妬して、恨んで恨まれて。  許せない事も沢山あったけれど、嫌いになれなくて、どうしようもなく大好きで。  思い返せば修羅場を潜ったと言った方が正しい。  とにもかくにも恋人になるまでの経緯が波乱万丈であった。 『まぁ、良いや。七日君は僕とデートするのは決定だ。予定がないなら問題ないだろ?』 「予定はないがお前はゆっくり休め」 『あはははは。強情な君も大好きだ。でも僕は君に関して遠慮しないから。デートするって言ったらする。決定事項だから変更はしない。Do you understand?』  ごめん、そろそろ電話切らなくちゃ。  押し問答の末、互いに折れないまま一方的に通話が終了した。

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