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『何が有った?』
使用人の一人が焦った表情でダイニングテーブルに近づき「海輝様が更紗様と接触をしたとの情報がはいりました」とかなり気まずそうな声で若狭に耳打ちした。
使用人の背後、食堂の入り口で情報源である若狭の部下が深く頭を下げる。
顔も体もすべてが角ばっているその男は佐々木と名乗った。
「貴方が此処にいると言う事は、守る対象がいなくなったと言う事ですね」
若狭の勤務先の医療機関関係者ではなく、朝比奈本家の人間だ。
先日の若狭の言葉を思い出す。
ボディガードを付けると言ったときは半ば 冗談かと思ったが本気だったのだ。
目の前にいる佐々木が更紗のボディガードの役目を受け持ったのだろう。
食事を中断し、部下をプライべートの場に招き入れるなど余程の緊急事態なのだ。
生活を共にする時、この家に仕事は一切持ち込みたくないと話した若狭はその言葉通り、朝比奈本家の使者であろうと敷居を跨がせたことは無い。
四年間一緒に暮らしてきたが、来客すら一度も無いこの家は外部の人間の存在を頑なに拒んでいた。
この家で過ごすことを許されたのは住人とごく一部の使用人だけだ。
それなのに―― 何が有った?
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