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『三人も居ながら何故このような結果に? 無能なのですか』
「死にはしませんよ。海輝さんはあれで無駄な殺生はしない男です。彼はお前が大事なので、間接的にでもお前に傷が入ることを極度に嫌います。更紗を傷つければお前が苦しむことも理解している」
人間をトロリーケースに詰め込んだ時点で、若狭の言う事は大いに矛盾している。
この男や海輝の言う「傷付ける」がどの程度まで許容範囲なのかが分からない。
「ボディガードは?」
「付けましたよ。お前に一人、更紗には佐々木を含む三人です」
「人数配置が妙ではありませんか」
「妙ではありません。海輝さんはお前にだけは乱暴はしないでしょうし、お前も目の前に彼が現れれば何だかんだ言い抵抗はしないでしょう」
「確かに」
「しかし、問題は再会後です。高確率で抱擁し口付けた後そのままホテルの一室に入り同衾する流れになるでしょう」
それは如何いう流れだ。
「先生は色々誤解をしている。海輝は即物的な人間ではありません」
――多分、と心の中で付け加える。
「以上の理由より私に連絡をとり忘れたまたは、出来る状態でない場合夕食の準備に影響します。よって連絡役として一人付けておきました」
「色々とおかしくありませんか」
「山本が困るでしょう」
この男が料理をするわけではない。
実家から連れて来た家事使用人の山本の仕事だ。
夕食の準備にこだわった結果、判断した人員配置らしい。
脱力する。
この男も色々ずれている。
「三人で問題無いと思ったのですがねぇ」
「では三人も居ながら何故このような結果に? 無能なのですか」
真っ直ぐ見つめると、佐々木が深く頭を下げた。
相手が海輝だった為下手に手出しが出来なかったという理由が大きいが、それを見透かした海輝が容赦なく襲撃し、ボディガードが使い物にならない状態になったようだ。
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