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『隙が有れば喜々として付け込む男』

「何て情けない男だ。隙が有れば喜々として付け込む男だぞ。加減をして勝てると本気で考えたのか? 海輝を馬鹿にしてるのか。相手が海輝だからこそ全力で行け。第一 貴方は海輝ではなく若狭先生の部下じゃないのか。大失態だろう。残りの二人を今すぐここに呼べ」  と怒りのあまり立ち上がった錦に、若狭は赤い切子の冷酒杯を手酌で満たしながら着席を促す。 「まぁ落ち着きなさい。お前が正座説教をしても、何の解決にもなりません。寧ろ唯のパワーハラスメントです。虐めは良くありませんよ」 「それで何故海輝が更紗を攫うのだろうか。何故俺ではなく更紗に会いに行った? おまけに拉致するなど乱暴にもほどがある。彼は今日まで仕事のはず。何時ここに戻ってきた?」 「綿密に立てた計画と言うよりは、錦に会う為にただ動いたと言えます。彼が綿密な計画を立てれば、恐らく証拠映像など残りませんよ。裏を返せば悪さをするつもりはないと言う事でしょう。私の部下は被害を受けましたが、三人全員潰さない辺り悪気はないのでしょう」  そう言い、テーブルの端に置き二人で見ていたパソコンを両手で取りあげ自身の目の前に置きキーボードを弄る。 「ご自分の部下が被害を受けたのに、随分と悠長な事をいいますね」 「正直私にとっては、被害と言う程の被害ではありません。佐々木が此処に来れた時点で、海輝さんは彼らを「どうにかする」つもりはないと言えます。排除するつもりなら佐々木は今頃簀巻きにでもされていると断言できます。そんな顔しないでください。更紗は無事ですよ」  暫くタイピング音が響きそしてとまる。 「追加情報ですがね、海輝さんは七月一日の十四時に航空運送代理店にアクセスしヘリの手配をしています。 本日の十七時四十分にK地区のヘリポートを利用しそこからタクシーでホテルへ直行。トロリーケースは七月四日に運送会社に持ち込み宿泊先のホテルへ配送。受け取り指定時間は本日の十五時になってます」  すでに計画をしていたと言う事だ。

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