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『早く寝たら明日が早く来る気がする』『それは錯覚だ』

「お前は何を考えてるんだ。更紗に代われ」  無関係な人間を巻き込むなど、言語道断だ。 『何を考えてるか? 君の事に決まってるだろう? そうそう。晩御飯はちゃんと食べなさいね。君の好きな鱧だよね。しかし蓮蒸しが無いのが残念だ。今度僕が作ってあげる』 「何故夕食のメニューを知っている。更紗か? それともここに来たのか?」 『君の事は何でも知ってるよ』 「今どこにいるんだ」 『明日連絡するよ。待ち合わせデート楽しみ。今夜寝れないかもしれない』 「夜はちゃんと寝ろ。二十三時までに就寝するのが望ましい。それで何故ここに来れた。仕事は」 『仕事? 「恋人とセックスするから帰ります」って言ったら帰れたし、あと月曜日は午前は半休とれたよ。 というか、月曜日の午後に予定している会議は今いるラウンジでするからそのまま仕事に直通って感じだね』 「何て破廉恥な事を言うんだ。ふざけてるのかお前は」 『上司も朝比奈だからね。問題にはならないよ』 「問題にならないことが問題だ」 『冗談だってば。ははは。ヘリで異動したから移動時間を大幅に短縮できたのさ。いま僕はジャルダン・デザンジュに居る。舌噛みそうだよ錦君。ちなみに部屋は一七十二号室だ。一足先に明日のデート会場の下見をするつもり。楽しみ過ぎて寝れない気がするけど君の言う通り今日は早く寝る。早く寝たら明日が早く来る気がする』 「それは錯覚だ。早く寝ても一日は二十四時間だ」 『心理的な問題さ』  全くこの男は。  此方の都合も考えないで無茶ばかりする。

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