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『言い訳は一切聞かない。首を洗って待ってろ』

「我儘が過ぎる」 『でも僕の我儘なら聞いてくれるだろ? 僕も君の我儘なら聞いてあげる』 「ではなぜ最初に俺の言う事をことごとく反対した。俺の我儘を聞くんだろう」 『それは君の我儘じゃなくて僕の事を考えて我慢した答えだろう?』  見透かされた事がかえって錦の怒りに火を注ぐ。  怒り心頭のまま錦は海輝、と低い声を発する。 「一七十二号室と言ったな。これから行く。言い訳は一切聞かない。首を洗って待ってろ」  ――錦、それは脅迫で恋人に会いに行く台詞ではないですよ。もう少し甘い言葉を口に出来ませんかねぇ。  若狭は呆れたように口を挿むが無視をした。 『え? 待って。これから? しかも激おこなの?』  流石に驚いたのだろう。 「勝手な事ばかりして俺を振り回して許されると思うなよ。今すぐ宿泊人数を変えろ。願みじゃない命令だ」  一発殴らなくては気が済まない。 「情熱的で素敵です」と若狭が笑顔で拍手をしている。  錦は一方的に通話を終わらせて佐々木に子機を押し付ける。 「舌の根も乾かないうちに申し訳ありません。外泊許可を頂きたい」 「宜しい。車を出すので準備しなさい」  若狭は崩したナプキンをテーブルの端に置き席を立った。

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