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『状況を説明してくれないか』

「状況を説明してくれないか」  若狭がこのホテルに車で突入後、錦が倒れその後のことだ。  十九時三十分から二十時十五分にかけて更紗は、如月の付き添いでホテル内のフレンチレストランで夕食を摂り終えてスイーツを楽しんでいた。  その時、如月の同僚から「若狭が運転をするから海輝の上司を通しホテル側に通達及び、客の避難誘導を頼む」と、若狭側の部下同士が交わした情報を得る。  更紗を任されている彼は、同僚を通じロビーの様子を窺っていた。 「何で海輝さんじゃなくて上司?」  更紗が首をかしげると、如月は愛想よく笑う。 「海輝様の上司は本家側の人間。上の立場であればあるほど、本家と密接な関係になる。つまり、朝比奈家の中枢にいらっしゃる若狭様に何か不都合が起こると困るわけです。しかし海輝様の場合は、錦様を差し置き若狭様を優先することはまずありえません」  直接海輝に情報が行けば、錦を乗車したまま危険運転をする若狭に激怒することは火を見るよりも明らかだ。  妨害工作に出た場合、錦以外の無事は保証されない。  若狭及び他の部下が危険にさらされる。 「若狭様の部下を予めこのホテルに配置し、人的被害が出ない様に務めたと言うわけです」  そして騒ぎを知った更紗は、慌てて駆け付け警察到着時の騒ぎに紛れ如月の協力の元錦だけを連れ出したのだ。  因みにこの客室は、海輝が更紗の為に用意したらしい。 「……若狭先生だから無事に逃げ切りそうですけど……多分あの人海輝さんより強いと思います」 「何方にせよ若狭様を害すれば、海輝様が朝比奈家上層部すべてを敵に回す羽目になります」  更紗と如月の会話に錦は不機嫌な面持ちで二人を見上げる。 「彼がそのような軽率な真似をするはずがない」 「まぁ、でも取り敢えずは兄様が気にするような事なんて何一つないです。それより麦チョコ如何ですか? このチープさが中々美味しいんですよぅ」 「後で頂こう。それより若狭先生は」 「あぁ、本日の若狭先生のお召し物、葛饅頭の精霊みたいでしたね。あの薄物と半透明の生地が何となく似ている」 「確かに先生は葛饅頭が好きだ。そうか、先生は大好きな饅頭をモチーフにあの着物を選んでいたのか。全く気が付かなかった。更紗、お前は賢いな」  若狭は葛餅と言うよりは、甘い菓子や食べ物が好物なのだ。  何故か如月が「ぶほっ」と吹き出し口元を抑える。 「今度、先生に白ではなくもっと濃い色の襦袢の方がより饅頭の餡子らしくみえると言ってみよう」 「兄様素敵。可愛い」 「揶揄うのは止せ」  真剣な顔で答えた錦に、如月は小さく笑いそれ始める話しを修正する。 「若狭様ですが、佐々木さんと共に警察に出向きました。朝比奈本家から弁護士など派遣されたようです。大事にならず直ぐに開放されるでしょう」  圧力がかかるので、と言う言葉が見え隠れした

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