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『縺れて解けない』

 この俺が嫉妬だって。  愕然とした。  そんなもの、何故感じなくてはならない。  自信がないから?  海輝を信じられないから?  違う。  海輝に愛されている実感はある。  彼は誰にでも優しい。  彼の優しさに触れれば誰だって自分が特別になった気分になる程に、優しい。  彼は誰にでも優しいので、勘違いする人間が多い。  錦も彼と出会ったとき、何度も自分が特別なのだと勘違いしそうになった。  誰にでも優しいから、だから本当の意味で彼の特別になっても、その他大勢と同じなのではと錯覚しそうになる。  不安が付きまとう。  彼は黙っていればとても魅力的な男なのだから、仕方がないじゃないか。  離れている間、他の誰かと過ごす時間の方が錦よりも長いから不安なのだろうか。  上手く纏まらない。  恋は初めてだ。  だから、分からない事が多い。  迷わず答えを出すことが出来ないから、とても厄介だ。  時々なすすべがなく嫌になる事もある。  分かったことと言えば、海輝に何ら責任は無く単純に錦自身が狭量な人間だからいけないと言う事だけだ。  矛盾がぶつかり、絡まりぐちゃぐちゃに縺れて解けない。  自分の事なのにコントロール不能な領域があることが何だか気持ちが悪い。 「心配? 僕は君一筋だもの。大丈夫だよ」 「心配何かしてない。お前は俺のものだ」 「うん。ふふ、嬉しいな。君はあまり言葉にしないから。あ、物足りないとかじゃないから! 言葉にしなくても君の気持は分かってるよ。でも何だか浮かない顔してるね」  愛情を交換し幸せだから、悩みの種が彼と彼への思いにあるなんて流石に気付かれたくはない。 「――恋人だからと言い、あまり俺にばかり時間を使うなと言ってるんだ」 「君以外の誰かとも過せって? それは僕が決める事だよ」  だから、何時も通りに不安や嫉妬など表に出さない様にして言葉を選んだ。  そうあるべきなのだ。 「そうか。先に言うが、お前と違い俺は必要以上に詮索はしないし疑いも嫉妬もしないから安心しろ」

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