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『世界の中心は君だ』

「君は僕が恋人だから君に会いに来たと思ってるのかもしれないけど、少し違う。君が僕に会いたがってるからじゃない、僕が君に会いたかったんだ。恋しくて仕方がないから、だから君に会いたかった」  恋は一人ではできないと若狭は言った通り、相手がいなくては恋は成り立たない。  互いの許しがなくては、恋人にはなれない。  海輝の感情が無くては、ただの独りよがりか片思いに過ぎない。  海輝の心を黙殺してまで貫く意地など、あってはならない。  彼の笑顔が大好きなのに、彼の表情を曇らせてしまった。  何て難しいのだろう。 「一件矛盾してるようだけど食い違いはないよ。人を愛する事ってそう言う事なんじゃないのかな。と言っても僕も君も恋愛初心者だからね。ははは、悩みながら幸せになろうってくらいが一番良いのかもね。少しずつ階段を上るみたいに、関係を深めて恋人として過ごすことが当り前になれば良いと思ってる。今は未だ半分も昇れていないから、不安定なんだ」 「そうか。……そうだな。海輝、有難う」  すとんと胸に落ちる。 「先は長いんだから、ゆっくり進もう? だから、僕を思っての言動ならお願い。突き放す様なことはもう二度と言わないで」  ――君の思いがあってこそ、恋ができるんだ。   折角結ばれたのに僕の思いだけだなんて、思いたくない。  始めて触れた弱音。  意地ばかりを張っている自分とは違い素直な彼の声だ。  知らずに錦は微笑む  その顔を海輝は呆けたように見て、くしゃりと歪む。  無防備過ぎる、表情。  包み隠さない錦への思いの純粋さに、愛しいと思わずにはいられない。  海輝の真意をようやく汲み取ることが出来た。  海輝が繰り返した「君と同じ」と言った意味を。  どんな錦でも変わらず愛すると言った。  ――そして、彼もまた錦と同じように寂しかったのだ。  何故、海輝だって同じではないかと考えが及ばなかったのだろう。  平気と見えても、内面まで同じではないと。  自分自身が良く分かっていたはずなのに。  海輝が錦の恋人であるなら、錦もまた海輝のたった一人の恋人なのに。 「世界の中心は君だ。君に望まれた事が僕の生きている意味だ」

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