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『柔らかな果実を貪るように』 

「はぁ、は……ン……」  頬を撫でられながら唇の裏側を探られると、その優しさに酷く大事にされているのが分かる。  するとシャワーを終わらせようと思っていたはずが、口付を受け入れてしまう。  ゆっくりと撫でる手に合わせながら、舌が蠢くと唇の隙間から小さく息継ぎと共に喘ぎが漏れた。 「……っ、ふ、ん、っん」  そろそろと動く舌先にさざ波の様な快楽が押し寄せて、堪らず薄く開いていた口をさらに開いて舌を差し出した。 「あ……ぁっ」  愛撫され舌先が上顎の裏側をつつくと大きく体が跳ねる。  波打つ体を抱き込んで流し込まれた唾液を飲み込む。  柔らかな果実を貪るように、唇を吸いねっとりと舌を絡ませた。 「ぷはっん、海輝……苦し」  息を弾ませて離した唇を繋いだ細い糸が切れる前に、もう一度唇を合わせた。  頬を包む手に手を重ね濡れた唇から互いの唾液を啜りあう。  湿り気のある吐息を飲み込み、身を委ねれば肘を掴んでいた左手が優しく腕を撫で、肩を包み肘まで何度か往復する。 「っ……くすぐったい」  ぬるつく海輝の左手は脇の下を潜り肋骨を数え腰を撫でる。  洗うと言うよりは愛撫と言う方がふさわしい。 「んっ……ふ、う……」  深まる口付と体を這い回る手に昂る。  ちゅぷちゅぷと、ぬかるみを掻き混ぜる淫靡な音。  自分でも信じられない程の甘く乱れた嬌声。  何をされるか予想は簡単にできた。  彼が何をしようとしているのか、分かっていた。  分かった途端、淡泊なはずの己がそれを渇望していたことを自覚した。 「あっ、うみ、てる」  このまま、彼の物になりたいと滾り立つ程の思いが突き上げる。  リビングルームで口付けた時、溶けあいたいと願った。  一体化願望が、にわかに現実味を帯び喚起する。  頤を上げ上向けば滴る雫と共に彼が見下ろす。  食い入るように鋭く見下ろす瞳を今度は反らすことなく見つめ返すことが出来た。  ともすれば乱れて崩れそうになる体を海輝に預けて何とか立っていた、 「――なんて顔してるんだ」  見たことも無い獰猛な光を宿し錦を見下ろす。  このまま、頭から食われてしまいそうだ。

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