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『淫らさを曝け出す』

「恥じらいながらイクのがとても可愛いんだ」  海輝の告白に、酷く後ろめたさを感じて言葉が続かない。  狼狽が治まらず、喉が痙攣する。 「君はこんな風に乳首を摘ままれて」 「止めろ聞きたくないっ」  突起した乳首に泡を乗せ挟みこんだ中指と親指が力を込めていく。  きゅっと摘ままれて丸く膨らんだ先端に人差し指の爪先が食い込む。 「ひぁっ」 「先端を擦られると可愛く啼く」  今みたいに可愛く。  海輝の囁きに更に息を喘がせる。 「あっ、アンっ、あぁ」 「片方の乳首を指で弾かれて、もう片方は舌を這わせてから小刻みに上下に動かして、叩くようにして舐るんだ。後で試そうね」  泡で滑る胸の先端を指先でくりくりと撫で弾きながら、存在しない乳房を探る手つきで揉みしだく。 「――ぅっンっ……あぁ」 「君は摘ままれて先端をくすぐられるやり方が一番感じるみたいだね」  ぬるつく指が、勃ちあがった胸を嬲る。  少しだけ痛みを感じたが痺れるような心地よさに呻く。 「やぁっ」 「小さな乳首がこんな風に摘まめるようになっちゃったね。コリコリしてる」  背後から耳朶を食まれ、生暖かい舌に耳殻を舐られる。  口に含まれて、骨の尖りを吸い滑らかな線を描く耳朶をなぞられ体を丸める。 「うっぅ……ぁっ」 「ほら、ちゃんと立ちなさい」  丸まろうとする錦を背後から引き戻す。  そうして矢張り執拗に乳首の先端を撫でる。  肌の上で踊る指先が織火となり、いまや胸の先端だけに収まらず腰や腹の奥深くに疼きが広がる。  小さな快楽の芽を育て、体全体に根が張り巡らされていく。  自分の体なのに。自分の体では無いようだ。  喘ぎを漏らしながら、身悶える様を楽しむように海輝は小さな胸の粒を撫であげた。  唇から鼻にかかった呻き声が漏れる。 「待ってくれ、そんな、急に」 「急じゃないよ。五分以内にスケベになるって前もって言っただろ」  ……あの言葉、本気だったのか。  誰がそんな言葉を真剣に受け取るのか。  唯の卑猥な揶揄いかと思い適当に流していたのに。 「そんな事関係なく君の体は良くなってるみたいだけどね」  脂肪の無い胸を揉むようにして動く手は、小さく幼い性感を一つ残らず引き出そうと攻め立てる。 「んっ…ぁ…っ…はッ…はぁ…」  意識などしていないのに、大袈裟な程に反応する体をどうしたら良いのか分からない。  徐々に制御できなくなる。  しかし、理性は未だある。  海輝に委ねるにしても羞恥が勝る。  こんな場所で、淫らさを曝け出すのだけはどうにも抵抗が有る。  ベッドに誘うにしては、今更だ。  遅すぎる。  もはやそんな誘いを口に出せない状況にも思えた。  戯れの様な愛撫が完全にセクシュアルな物へ変わり、スイッチが入ってしまった。  本来はベッドでするはずのそれが始まってるのだ。  完全に機会を逃したと言っても良い。

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