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『濡れた声をこぼす』
「乳首くりくりされるのどう? それとも舐めて欲しい?」
「どっちも……あっア、ン……だ、駄目……」
無垢な幼さを脱ぎ捨て、濡れた声をこぼす。
ベッドでの姿を楽しむ声で「良い声で啼くなぁ」と続ける。
「エッチな事されるの好きでしょ」
呻きが喉にこみ上げる。
「――……んんっ」
思わず両手で口を覆い、声を殺し体が跳ねるのを抑えようとする。
刺激から逃れようと体をうねらせる。
「おや、変な所で我に返るね君は。無駄な努力は止めなさい」
鈎の様に曲げた指が小刻みに胸をひっかき、弾いて、押しつぶす。
巧みな指先の動きに乱される。
何処を触れられても甘い戦慄が走り、腰が砕けそうになる。
口に含んだ指を強く噛んだ。
そうでもしないと、どこか遠くに攫われてしまう。
「んっ……ふぅ」
「素直になったり意地を張ったり忙しい。脳内運動会でも開催してるのかな」
昔からコントロール出来ない状況になるとそうだものね。
錦は小さく首を振る。
何を否定したいのかすでに不明だ。
「頑張るねぇ、そういう事されると燃えちゃうなぁ」
俯き震える錦の項を舐め上げて、そのまま強く硬く立ち上がった乳首をひねり上げた。
「あぁっ……ヤダ、痛い」
「長い事君のこと放っていたのに、感度が良くないか? ここは随分性感が鈍かった」
「知るものかっ」
じんじんと痛むそこを摘まんだまま、指先を擦り合わせ先程と違う不思議な感覚に息が弾む。
「んっンッ……海輝っ、優しく………痛いのヤダ」
先程の様に強い刺激を加えられるのは戸惑いが有る。
抱かれるのは良い。
厭らしい言葉で辱められたいわけではない。
「優しく、何」
「だから、痛いっ……乳首、ひりひりする」
「ごめんね」
そっと親指が胸を撫でる。
性感を引き出すものでも、痛みを与えるものでもなく宥める様に優しく動く。
ほっとして指先の動きを意識する。
「まだ痛い?」
「……少し」
本当はもう痛くは無かったが、優しく愛撫されるのが心地良くてもう少しこうしていたかった。
しかし、何時までも乳首を触らせておくわけにもいかない。
「もう離せ」
「ちゃんとスケベな気持ちになったかな?」
「なった。こう言えば満足か」
反抗的に半ばやけ気味に叫ぶ。
密室に声が反響し思わず眉をしかめる。
海輝は面白そうに笑いながら「何になったの?」と尋ねて来た。
「何になったの。誰の所為で何が原因でどういう風にスケベになったの? 錦君がどんなふうにスケベになったか教えてくれるかな」
「俺は助平じゃない」
「奥ゆかしい子だと思っていたのに、なるほどぉ。この程度大したことないんだ? 乳首しこらせてエッチな声で啼いてたのにスケベじゃないなんて、凄いなぁ。君にとってのスケベはもっとディープなものかぁ」
「違う助平なのは海輝だ。お前が助平だから俺も影響を受けたが、断じて俺が助平なわけではない。海輝が俺に厭らしい事を沢山したから」
吐いた唾は呑めぬが如く、まさに後の祭り。
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