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三十話:『メスの顔』

「君が気に入ってくれたレインシャワーみたいなミスト状にも出来るし、こんな風に吐水する事も出来る」  錦の目の前に散水版を上向けて見せる。  ホースから散水している様に一本の太い流水が吹きあがる。  ヘッドで流水調節をし、吐水の形が変わる。  飛沫を上げる一本の水流が徐々に細かく分かれ、スプレー状になる。 「これがさっき君を気持ち良くしてくれたスプレーモード」  そうして、水はどんどん絞られていく。  細い雨が繋がり最終的に、四本ほどの水流に変わる。  海輝がヘッドのボタンを押し、さらにヘッド部分のハンドルをひねる。  手品の様に水の流れが変わる。  ただ真っ直ぐに吹き上げていた四本の道筋が、宙で旋回しリボンの様にくるくると絡み合う。  空気を含み小さな泡が見える。 錦は半ば放心して目の前の噴水を眺める。

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