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三十一話:『男殺し』

 ひんやりとしたシーツの感触、夜のしじまに朧月の様な淡い間接照明。  天上に浮かぶ観葉植物の影、そして蠢く人影。  浮遊する視線が少しづつ定まれば、次に感触が戻り続いて意識が明瞭となる。 「御免。起こしちゃったか」  ベッドの端に腰かけていた彼が覆いかぶさる様にして、顔を覗き込んでくる。  帯を通さず引っ掻けただけのバスローブが肩から落ちた。  ナイトローブに着替えていないからバスルームから出てそう時間は経過していないのだろう。  記憶がとんでいる。  つまり短い時間だとは思うが気を失っていたようだ。

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