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『あまり謝るな』
「御免、嫌だった?」
「あまり謝るな」
瞳だけで微笑むのをぼんやりと見上げる。
首筋に触れた指先が喉の下を撫で胸までなぞる。
海輝がなぞる場所は、過去受けた手術の傷跡だ。
保湿をしなくては気温や湿度に影響し、皮膚に違和感を感じたり痛むことが有るのだ。
「少しくすぐったくて。……有難う」
細く浮き出る傷跡は、感覚が無い所と妙に敏感な場所が有る。
辿る指先に対して、鈍感な温さを感じたり火傷の傷跡の様に熱く疼いたりと、交互に奇妙な感覚を生み出す。
一本の線となった跡なのに。
所々変わる感覚に奇妙な気持ちになる。
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