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『真意を探る様に』
「お前は?」
「済ませたよ」
腕を上げ、海輝の肩に触れる。
そこに走る傷跡は薄い皮膚を被り盛り上がっている。
ケロイドになった傷痕を辿ると、くすぐったいのか肩が僅かに揺れる。
肩だけではない。
錦の手術痕と違い外傷による傷跡が彼の体には無数に走る。
彼が十代の頃海に落ちた際に負ったと言う傷跡。
錦と同様それは海輝が生き抜いた証だ。
手を伸ばしてなぞると、しっとりと温かい。
薄くなった皮膚の感触は他とは違い繊細でやわらかだ。
意味ありげな瞳で見下ろされて、海輝の頬を撫で唇に指を這わせる。
手を取られて爪先に唇が当る。
「……手だけで良いのか」
指の付け根、そして手の甲へ。
「手以外も良いの?」
海輝は唇だけで笑う。
瞳は真意を探る様に錦を見下ろす。
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