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『安堵』
「はぁっ……ふ……ぅ」
口付を繰り返し喉を潤しながらも、体は乾き始める。
さらりとしたリネンの上で冷やかに穏やかだった体温が少しずつ上昇する。
消えたはずの火が灯り始める。
ボトルが空になり、海輝が錦を抱きしめたままベッドに沈む。
抱きしめられたから、そうするのが当り前と言う風に抱き返した。
唇を合わせると、ひんやりと柔らかい。
錦を嬲り笑った意地の悪さが信じられない程に優しい。
バスルームで悲鳴を上げながら、奪われるように何度も乱されたのが嘘の様な穏やかさ。
背中に手を這わせ、傷跡を模る。
首筋に鼻先を埋めて、海輝の香りを吸い込んだ。
僅かにベルガモットとグリーンの残香。
記憶に残る香りとは違うが、海輝の物だと思えば安堵が広がる。
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