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『彼の舌が這わなかった場所は無い』

「嘘だっ待ってくれ」  びくりと足が震え、息をのんだ時にはすでに根元まで飲み込まれていた。 「そんな、汚い……アッ」  踵を包み込み、緊張で丸まった親指に舌が絡まる。 「海輝っそんな事駄目だ」  交差した視線の先で海輝の目が笑う。  今更だろうと言いたげだった。  それはそうだ。  この体に彼の舌が這わなかった場所は無い。 「海輝、そこは汚い所だから……あぁ」  陶酔交じりの声に海輝が目を伏せて、爪先に口づけをする。  伏せていた瞳がゆっくりと視線を流す。  胸が張り裂けそうなほどに激しく打ち付ける。  そして、舌を這わせながら錦を見下ろした。  見せつける様に、一本ずつ丁寧に舐め上がる。  熱を孕む視線に晒されて、焼け焦げてしまいそうだった。

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