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『許容範囲に収まる』
手の甲にそっと口付て、舌をだらりと垂らした。
舌全体を使い錦の手を舐め上げる。
指の背中、骨、爪の先を濡らし、指の間に舌をねじ込む。
そのまま舌を大きく捩じると、錦は腰を突き出すようにして声を上げた。
脊髄に強烈な快感が這い上がる。
指と指の間に柔らかな舌を入れ、つっと敏感な側面を舐め錦の両手首を掴む。
手首の内側を親指で撫で馴染む体温としっとりとした肌の質感を楽しみながら、ちゅぷちゅぷと音を立てて指を一本ずつ咥内に招きねっとりと嘗め尽くす。
唾液でドロドロに濡らした後で、海輝はその下に隠された熱量の香りを吸い込んだ。
見られるのも触られるのも、最初の抵抗が霧散して構わないと思い始めた。
しかし、匂いを嗅がれるのはどうも耐えがたい。
「錦君っ、はぁ、はぁ。あぁ、錦君のここに顔を埋るのは久しぶりだ」
指の淵をなぞりながら、その下で息づく性器に吐息がかかる。
足の間で蠢く頭を見下ろす。
息を荒くし興奮を露わに鼻先を埋め夢中に香る恋人を見ていると――頑なに拒む理由がなくなる。
だから――それも許容範囲に収まる。
諦めに近い形で、海輝が鼻先を埋めるのを黙認する。
そう言えばこの男は錦の体を慣らすのに、恐ろしいほど気長にそれこそ年単位で時間をかけて錦の性に対する道徳や観念のハードルを下げていった。
一度ハードルを超えれば、抵抗感は低くなる。
そして一度許せば、さらに次も受け入れる。
例えば、今の様に。
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