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『上書き』

「あぁっまた、イクっ……あっ、あぁ」  絶頂を味わい理性を引き戻そうと身をよじらせると、海輝が大きく開いた口で陰嚢にむしゃぶりついた。  指先で愛撫しながら、軽く皮膚を引っ張り咥内に招き舌先で転がす。  不規則に響く大きく粘り気のある水音が、海輝の口の中で反響する。  咀嚼音を思わせる音が激しさと執拗さを物語る。 「あっ、だめ、舐めるの、駄目、あっ、やっ、あぁ、あっ、離してっ離してくれっ、またっ激しいの、駄目 やだ、引っ張るのっ、あっ、あぁ、あっ」  袋の中にある精巣を味わうように転がす。  袋ごと舌の上で波打たせ、錦はのた打ち回るようにして達した。  射精を伴わない幼いころの快楽とは比べ物にならない。  熱風の様に錦を攫い何もかもを上書きして、絶頂を知る。  きっとこれからも、海輝の指や舌で上書きされ続けて錦の体は変わっていくのだろう。 「アッあっあぁ――……ッあ――あっ、はぁ、はぁ、あぁ……」  駄目。  飲んだら駄目。  懇願もむなしく目の前で海輝が喉を鳴らした。  飲み下した海輝の濡れた唇満足げな顔に軽く衝撃を受けて、達した後の余韻さえ味わうことなく見つめた。  海輝が幸せそうに微笑み、口をすぼめ唾液とともに僅かに残る体液を飲み込む。  錦は海輝の恍惚と溶けた眼差しを茫然と見返した。

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