234 / 245
『欠伸をかみ殺す』
穏やかな気持ちで、海輝の声を聞いていた。
出涸らしになる程に乱れたのに。
睡魔は一向に訪れることはない。
眠る時間が惜しいと感じているからかもしれない。
海輝も同様なのか疲れている筈なのに、口数多く錦との会話を楽しんでいる。
やがて、感じ続けていた疲労感は恍惚感に変わり、思考が淡い霧に包まれていく。
気怠さと心地良さに漏れた欠伸をかみ殺した。
眼は冴えてるのに頭の中はフワフワとしていて、浮遊感が気持ち良い。
もう一度欠伸をかみ殺すと、涙が滲んで眼の奥がじんと痛んだ。
ともだちにシェアしよう!